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慌ただしく時が過ぎ、明日にはAが出ていくという日になっていた。
日もすっかりと落ちていて、ここのところ多忙だったこともあり彼女とあまり話もしていなかった。
「近藤さん、確認お願いします」
「おう。分かった。気をつけてな」
視界の端では、千影が近藤に外出届を渡していた。
時計の針を見るに、彼女はAと銭湯に行くのだろう。
近藤から印鑑を貰い、慌ただしく千影は部屋を出ていった。
(せっかくこいつらもまた再会したっつうのに)
Aと千影は相変わらず自他ともに認めるベストパートナーといえる二人だった。
職種が変わったとはいえ、彼女達の連携は鮮やかで、やっと元に戻ったと感じていた。
「トシ。明日の資料、とっくに終わってんだろう」
近藤は土方の手元を覗き込みながら声をかけてきた。
取り掛かっている作業は急ぎのものではない。
それを確認して、近藤は眉を下げる。
「お前も風呂行ってこい」
「せめてこれだけ終わらせ」
「駄目だ。
別にそれを終わらせなくても、明日には響かんだろう。
トシにとって、それは
Aが出ていくことより大事なことなのか?」
胸がざわざわと音を立て始める。
わざと目を背けてきたそれに、上司は直球で投げかけてきた。
彼の目は真剣だ。
それが見ていられず、資料を畳んで縁側で煙草に火をつける。
いつもより、煙草の味がほろ苦い。
「最近、事件事故が立て込んでたからなあ。
お前達には少しばかりタイミングが悪すぎたか」
「近藤さんに心配されなくたって、俺達には何もない」
「馬鹿言うな。もうとっくに皆知ってるよ。
お前達が言わなくてもな。
Aも、トシも、どこか余裕があるし、穏やかになった。
そして、より一層
似てきたよ」
お互いの腹を見せないところとかな、と彼は呟いた。
背後で近藤が立ち上がったのが分かり、まだ火がついている煙草をもみ消していると、頭の上に布を置かれる。
そして、すでに土方の名前が記入された外出届を見せられて、
「直接話してこい。
千影には俺からもう言ってあるから」
ぽんと証明するように印鑑を押した。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時