弐十 ページ20
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いつもに増して、喉が焼けるような感覚になる。
酒もなくなっていくスピードが早い。
それは自分だけではなかった。
そんな時だ。
「…すみません。ちょっと失礼します」
もう日付も変わってしまい、日もない真夜中だ。
こんな時間に電話を掛けてくるなんて、よっぽど緊急な要件なんだろうかと思っていた。
彼女がディスプレイを見た時の一瞬険しくなった顔を見るまでは。
「…お疲れ様です。どうしたんですか、こんな時間に」
電話の向こうから、楽しそうに笑う大声が聞こえてくる。
大方、例の厄介上司だろう。
この時間だ。
飲みの場に同席しないかという誘いだと予想がついた。
「誘っていただけるのは有難いんですけど、久しぶりにゆっくりしたくて。
はい…はい…それはそうですけど、私もう酒が入ってるので、運転できないんですよ」
ありがとうございます、と律儀に断り続けるAに対し、相手の電話は止まらない。
いくら真撰組の人間といえども、こんな時間に女を誘うなんて常識的に可笑しい話だと思った。
否、そういう感情があるからこそこの時間に誘うのだろうが。
「というわけなので、楽しんでくださいね。
また明後日からよろしくお願いします」
まだわあわあと騒ぐ声が聞こえるが、Aは容赦なく通話ボタンを切って見せた。
女は悪い顔をして笑い、楽しそうに酒を舐める。
「いいのか。上司相手に」
「いいんです。
今日は土方さんが私の直属の上司です」
へらりと笑う女の手を掴む。
「上司、だけでいいのかよ」
掴んだ腕から早くなる脈を感じる。
それに影響されるように、自分の心臓も早くなっていく。
近藤や沖田達に促されるようにこうなってしまったことは癪だが、
もう、いいだろうか。
こうなることに、時間を掛け過ぎた。
「俺は、あの野郎と同じ立ち位置にいるのは御免だ」
酒に酔って緩くなった理性に飲み込まれそうになるのを耐えながら、丸い瞳を見つめる。
しかし、そのまま閉じられる予定だったその瞳は細くなって、
「…なんか、嬉しいです。
あの鬼の副長が、妬いてくれるなんて」
女はふふっと笑い、首に腕を回し土方の頬に口づける。
(余裕がないのは、俺だけってことかよ)
楽しそうな彼女から宣戦布告を受けた気がして、
「そんなこと言ってると痛い目見るぞ、馬鹿」
小柄な身体を抱え上げた。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時