十九 ページ19
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「A。ちょっと」
酒を舐める土方を横目に、千影についていく。
彼らに姿を見えないように、彼女は部屋の奥へとAを連れ込んだ。
しーっと人差し指を立て、扉をゆっくりと閉める。
「悪いんだけどさ、私と沖田さん、日付変わる前に帰るから」
「はっ??なんで」
思わず大きな声を上げると、千影はまた人差し指を立てる。
傍にある時計を見れば、タイムリミットまでもう一時間を切っている。
彼女は可愛らしく舌を出して、両手を合わせた。
「明日、早番でさあ。残念なんだけどのんびりしてられなくて」
「ちょちょ、待って。沖田さんもなの?
二人とも帰っちゃうの?!
てか、お酒飲んでるしそんな急いで帰らなくても…」
そう言いかけて言葉が止まる。
千影も沖田も一滴も酒を飲んでいなかったことを思い出す。
彼らが持ってきた袋の中にもAの好きな銘柄のものが入っていただけだ。
「今日は酒はいらねえや。それよりも朝から何も食べてねえから何か食いたいんでえ」
そう言い、彼は上機嫌に枝豆を摘まんでいた。
千影も同様だ。
きっと二人は泊っていくのだと思い込んでいたから、その意図を感じ取ることができなかったのだ。
一方で、
「土方さんは明日休みなんでしょう。働きもんがやっと休み入れてくれて近藤さんの心配もやっと晴れたでしょうぜ」
「うるせえ」
土方の明日の予定は空いている。
きっと彼も沖田達がAの家に泊まることを前提にここにきているに違いない。
酒が入り、少し大きくなった声が聞こえてきた。
つまり、
「ということで。今晩は楽しんでね」
土方と二人取り残されてしまうということ。
怒鳴りたくなる声を押さえて、千影の両肩を掴むも彼女は反省の色なしにへらへらと笑うだけだ。
今考えれば、松平の件から全てここまでつながっていたのかもしれない。
そうぐるぐると思考を巡らせていると、千影は扉を開けて勢いよく出ていく。
そして、
「沖田さん、そろそろ帰らないと」
「そうだな。早くしねえと怒られちまうからなあ、面倒臭え」
「おい、お前ら。明日休みなんじゃ」
「じゃ。あとはお二人さん、楽しんで」
彼らは土方の止める声も聞かずに、慌ただしく帰っていった。
そして、携帯が軽快に鳴って
『俺達って空気読めるいい奴らだろ』
今頃怪しく笑っている男がメールが届いて、顔を顰めた。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時