十四 ページ14
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土方達の努力のかいもあって、だんだんと事件の中身が見えていく。
でも、それはタイムリミットでもあって。
「沖田さん達のほうも落ち着いてきたみたいですね…よかった」
連日騒がせた抗争も徐々に収束を見せている。
(そろそろ帰らなければ)
つい先ほど松平から明後日撤収しろとの連絡がきた。
事件の犯人は土方達が調査する郊外ではなく、元居た派出な街の住人だった。
逮捕や取り調べまでは近藤達が行ってくれると聞いたが、組織の中心にいる土方が現地にいないわけにはいかない。
それに、いつまでもここにAを縛り付けておくわけにもいかなかった。
彼女の居場所は、土方のところではないのだ。
(明日は最終確認して、明後日の朝には向こうか…)
隣でAは手帳と睨めっこしながら、唸っている。
覗いてみるに、手元に残った締め切り間近の仕事をどうするか考えているらしい。
遠距離かつ職業柄頻繁に会えない環境で、久しぶりに一緒に仕事をして、仕事中にらしくもない私情が浮かぶ土方に比べ、Aは変わらず仕事モード。
だんだんと寂しさが、悔しさへと変わっていた。
時計で、もう普段なら仕事が終わっている時間であることを確認して、
「おい」
ペンを走らせるAの腕を掴む。
女は突然のことに肩をびくりと震わせた。
「びっくりしたあ…急にどうしたんですか。さっきまで黙ってたのに」
「仕事に夢中なのは良いことだな」
皮肉った言い方にAは首を傾げる。
眉を顰めながら土方を見て、
「何が言いたいんです?」
土方に問う。
こんな彼女の鈍感さを可愛らしいと思うこともあるが、今はただただ腹を立てる材料にしかならなくて。
年下相手に大人気ないことは重々分かっていたが、上司権限、と言って手帳を奪う。
いつもと違う土方の様子にAは明らかに戸惑っていた。
そして、何かを察したのか不意ににやにやと笑みを浮かべ始めた。
「…ふうん。なるほど」
そのままわざとらしく土方の肩を抱いて、ぽんぽんと叩く。
まるで子供をあやすようなそのやり方に、思わず腕を払った。
Aは嫌がる素振りも見せず、笑みを浮かべたままだ。
女は土方から静かに手帳を奪い返して、鞄に仕舞う。
そして、シートベルトを締めてエンジンを掛けた。
「日も落ちましたし、そろそろ宿に戻りましょうか。
…積もる話もあるようですし」
そう言って、余裕そうな笑みを浮かべて女は車を走らせた。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時