八重桜の舞う夜ｰ１ｰ［銀魂］

008／ぎんとき ページ8

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ほかほかと湯気を立てながら、Aは脱衣所から出た。

亜麻色の髪の毛先から垂れる雫を丁寧に拭き取り、廊下を歩く。

冷水をかけられて本気で一瞬三途の川が見えたが、なんとか生還したA。
松陽の焚いてくれたお湯はとても良い湯加減で、数年ぶりに快い疲れと安堵が体を包み込んでいた。


「うん、綺麗になりましたね」


言われていた部屋に戻れば、そこには満足そうに頷く松陽とすでにお風呂に入り、こざっぱりとした彼がいた。

土や血に汚れていたが、彼の髪はふわふわの銀髪で、サイズの合わない着流しを着ているせいか、背丈が小さく見える。
彼とAの目が合った。


「お風呂、どうでした？」

「あ、とても気持ちよかったです。ありがとうございます」

「ふふ、気に入っていただけてなによりです。銀時も案外悪くなかったようですし」


松陽の手が、隣の銀髪に埋もれる。
ピクッと身動きした彼だったが、振り払う気はなくなったらしい。ぶすくれた顔のままされるがままだ。


「銀時？」


しかしAは松陽の口から出た人の名前に髪の毛を拭く手を止めた。

銀時。
ここにいる人の名前だとすれば、それは彼しかいない。でも名前はなかったのでは……。


「この子の名前です。私がさっきつけました」

「人の名前をそんなにあっさり……！？」

「まぁまぁ。銀時も頷いてくれましたし、私もなかなか良い名づけができました。……子どもの名前を決めるのはこれで二度目ですが、やはり悩みますね」

「はぁ……いい名前だと思いますけど……」

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