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007/お風呂 ページ7

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ザパァッ! と彼は頭から水をかけられていた。

すぐそばに立つAにも水しぶきが飛んできて、思わず「わわっ」と情けない声を出してしまった。


「これで少しは綺麗になりましたね」


松下村塾についた途端、Aと彼は庭の井戸まで連れて行かれ、その水を頭からかぶらされた。
まだ春も始まったばかりというのに、これは寒すぎる。

そして、次はAの番だった。


「さ、こちらへどうぞ」


清潔なタオルと着流しを受け取った彼はピャッ、とまるで猫のような素早さで松陽から離れた。

Aはまだ水もかぶっていないのに全身を震わせ、松陽の前に立つ。
口から心臓が飛び出てしまうのではないかと本気で思ってしまうくらいにはAは冷静ではなかった。


「そ、そんなに怖がらなくても……。まずはあらかたの汚れを落としてからお風呂に入りましょうね」

「お風呂が、あるんですか?」

「もちろんですよ」

「……お、風呂?」


お風呂があるなら腹をくくろう、と覚悟を決めたAの後ろから控えめな声が聞こえた。

彼が初めて聞く単語に首を傾げていた。


「お風呂っていうのはね、あたたかい水が入った桶に入ることだよ! とっても気持ちがいいの!」


きっと、彼はお風呂をなにか知らないのだろう。
いや、普通の生活というのも知らないはずだ。
彼と一緒に過ごした数日間。彼はぽつりぽつりと思い出をなぞるように、Aに自分のことを話してくれた。

物心ついたときから家族がいないこと。
気づいたときから屍から飯を漁る生活をしていたこと。
優しくしてくれる人など、いなかったこと。


「寒さなんてあっという間に吹き飛んじゃうんだよ!」


大きく身振り手振りをつけて彼にお風呂について説明する。

その様子を松陽がどんな思いで見ていたのか、Aは知らない。

ボロボロで小汚いAたちを哀れに思っていたのかもしれない。屍から飯を奪っていた二人を侮蔑していたかもしれない。


「さ、お嬢さん。水をかけますよ?」


いいや、きっとそんなことはこれっぽっちも思っていなかっただろう。


「お風呂に入ったらご飯を食べて、あたたかいお布団でぐっすり眠りましょうね」


冷たさに耐えるためにきゅっと目を瞑る少女。
聞いたことも見たこともないお風呂を想像する少年。

彼女たちを見つめる松陽の瞳には、限りない慈愛の色が浮かんでいた。

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弥生 - そして先生と夢主って…!と思います^_^; (2021年11月2日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 銀さんとのやりとりかわいい…! (2021年10月28日 12時) (レス) @page12 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 自分のペースで良いですよ!(*^^*)夢主の成長が楽しみです!(*^◯^*) (2021年10月17日 10時) (レス) id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)
ふじ(プロフ) - 弥生さん» 弥生さん、コメントありがとうございます!最近更新ができていなくてすみません🙇‍♂️これからぼちぼち更新していこうと思っています!どうぞよろしくお願いします🥳 (2021年10月10日 12時) (レス) @page10 id: 9f078bb16b (このIDを非表示/違反報告)
弥生 - 夢主と銀さんの絡み方が可愛いですっ╰(*´︶`*)╯夢主の父親はどんな人かとか気になりますっ!続き楽しみです!(*^^*) (2021年10月6日 9時) (レス) @page10 id: fbe43e3660 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ふじ | 作成日時:2021年9月20日 0時

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