大きな背中 ページ35
「がっ――！！」
あまりの激痛にAの動きが止まる。
開いた口から血がこぼれた。
「君じゃ俺に勝てないよ。さっさと代わんなよ。宿儺にさ」
真人はため息をつきながらAの腹に手のひらを押し当てた。
――無為転変
「俺の魂に触れるか……」
突如真人の脳裏に溢れた映像。
そこには呪いの王、両面宿儺がいた。
いくつもの頭蓋骨に座り、じとりと真人を見下ろす。
「共に腹の底から小娘を笑った仲だ。一度は許す。二度はない」
ただ喋っているだけなのに、この圧はなんだ。
この、畏れはなんだ。
「分を弁えろ」
宿儺は冷たく言い放った。
「痴れ者が」
真人の脳裏から宿儺の姿が消え去る。
代わりに一発の頭突きがぶち当たった。
「代わんねぇよ……」
ぶっ、と鼻血が噴き出した。
「言ったよな。――ぶっ殺してやるって」
少女の飴色の瞳に光はない。
憎悪の赤に塗りつぶされている。
完全に意識をトばしたAは、血を滲ませた唇を歪めて笑った。
一発、二発、三発、四発――
何度も何度も何度も何度も、Aは頭を真人の顔面にぶつけ続けた。
術式を行使する暇も与えない。
数えるのも面倒くさくなるくらいに、ぶつけた。
罪のない人をたくさん弄んだ分。
罪のない人をたくさん殺した分。
順平のお母さんを殺した分。
――順平を、殺した分。
額から血を垂れ流したAは、真人の体が大きく揺れるのを感じた。
目にかかる血を拭い、Aは真人から一度距離をとる。ぐらりと前に倒れるその顔面に、Aは回し蹴りを放った。
完全に入った。
Aは喚き散らしながら、右拳を高々と掲げた。
「は？」
振り下ろしたその先に、真人はいない。
背後に立つ気配を感じた。
濃厚な殺気が背中を刺す。
Aは呆然と振り返った。
「じゃーね」
無傷の真人が、己の右手を鈍器に変えて立っていた。
息を吐く暇さえない。
眼前に死が迫った。
振り下ろされた鈍器がAに当たる寸前、一筋の風が吹き抜けた。
ぶわりとAの髪が舞う。
Aを殺そうとしていた鈍器は空中を飛んでいた。
「ナナミン！」
七対三。
大鉈を握りしめた七海が、Aと真人を隔てるようにそこにいた。
なびくジャケット。
急いで来たのか、少し乱れた金髪。
Aの前に立つ、その背中は見上げるくらいに大きくて。
Aは込み上げてきた涙をこらえ、立ち上がった。
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柊(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます！私もこの2人が大好きなんです〜！応援ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年1月13日 23時) (
レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください！！！ (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊 | 作成日時：2021年1月6日 0時
