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絆される ページ3

その感情に気づいたのはいつだったか。

目の前で大の字になり、息を切らしているAを見下ろしながらふと五条は思う。

この少女に抱く感情が、教師としてのそれではなく、一人の男としてのものになってしまったのは。
彼女の作る料理は美味しい。

「もう一回!!」

起き上がったAに五条は微笑んだ。

元々祖父との二人暮し。
料理を覚えるのは必然だろう。洋食よりも和食が多くなるのも頷ける。
そしてそれがすべて美味しいのだ。

「A、今日の夕飯はなにを作るの?」

突き出される拳を避けながら五条は聞く。

「えっ、あ、うーーん……なんか食べたいもんとかあるの?」

Aの料理の美味しさに気づいてから五条はAと夕食を共にすることが多くなった。
もちろんAが料理上手であるから、というのも理由の一つだ。

「今日は五条先生の食べたいもの作ろっか?」

だがもう一つ。

「僕の分も作ってくれるの?」
「当たり前じゃん! 五条先生めっちゃ美味しそうに食べてくれるから作りがいあるんだ!」

彼女は優しい。
花が咲いたような笑顔。
気づけばするりと自分の心の中にAは居場所を作っている。

「んー……じゃあ麻婆豆腐が食べたいな」
「おう! 任せてよ!」

ずかずかと遠慮なく心の中に入ってくるくせに、妙なところで鋭いA。

入ってきてほしくない。触れてほしくない場所をちゃんと理解しているA。

「なにか必要な材料とかあったら買ってくるけど?」
「ううん! 冷蔵庫の中のものだけで作れるとうおっ!!」

すいっと伸びた五条の足がAの足をひっかけ、ごちゃっとAは床に転がった。

「また僕の勝ちだね」

隣にいて、こんなに居心地がいい人は本当に久しぶりで。
彼女の隣を手離したくないと。彼女の朗らかな笑顔をずっと見ていたいと。
そう、思ってしまっていた。

「もう一回やる!!」
「はいはい」

だからせめて、この気持ちは見ないふりをすることにした。何年後かの未来、自分が辛くならないように。


だって、彼女を殺すのは僕なんだから。

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(プロフ) - ハルヒさん» ハルヒさん、コメントありがとうございます!私もこの2人が大好きなんです〜!応援ありがとうございます!頑張ります!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 64b7ea7410 (このIDを非表示/違反報告)
ハルヒ(プロフ) - ヒェッ…ナナミン好きやからこの2人のカプ嬉しい…応援してます頑張ってください!!! (2021年1月13日 23時) (レス) id: 46554589d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年1月6日 0時

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