Seungkwan ページ37
「もしかしたら海に身投げしちゃうかも」
笑顔で見送りながらジュニヒョンがそんなことを言うから、ハンソルが顔を真っ青にして固まってしまった。いつもなら笑って「まさか〜」となんでも笑い飛ばすようなハンソルも、Aヒョンのこととなれば別だ。
僕やチャンもAヒョンのことが大好きだけど、普段あまり表に出さない分ハンソルは特別Aヒョンを慕っている。
「スングァナァ…どうしよう……」
「いくら変人のAヒョンだってそんな無茶するわけないだろ。芸人じゃあるまいし」
「カメラも回ってないしね。島の人も一緒だって言ってたからきっと大丈夫だよ」
僕たちの一歩前を歩くチャンが振り返り歯を見せて笑う。家では長男のチャンはこういう時実は誰よりも頼りになる子だ。あれ、ハンソルも長男のはずなんだけどなぁ。
暫く海沿いを行くと堤防にポツンと座る小さな背中が見えてきた。スンチョリヒョンが言っていた釣り師匠の姿は見当たらない。
「ほら、いた」
「なんだ…」
Aヒョンを指差す僕にハンソルは不機嫌そうな顔をしてマスクの中で溜め息を吐いた。きっと安心したから出たであろうそれに、僕はひっそりと笑う。
さっきまであんな情け無い声出してたくせに、姿が見えた途端それを隠しちゃうんだから、僕の親友はなんて素直じゃないんだろう。
「Aヒョ〜ン」
呼びかけながら駆け寄るとAヒョンはくるりと振り返って、僕達の顔を見るなり嬉しそうに手を挙げた。
「どーしたー？」
「もう、どーしたー？じゃないですよ！ヒョンが身投げするんじゃないかって心配で迎えに来たんです！」
チャンが末っ子の顔をしてAヒョンの隣に座る。
「はは、身投げ？信じたの？」
「信じたくなくてもヒョンは何するかわからないからね」
「まったく。ジュニだな？変なこと言ったのは」
僕もチャンとは逆隣に座って少し上にあるヒョンの顔を見上げる。「わぁ、ハンソリも来てくれたの？」と嬉しそうな声で振り返ると、突っ立ったままのハンソルに手招きするヒョン。フワフワとパーマの掛かった黒髪が海風に流されて、ヒョンの優しい目元が少し寂しそうな色をしているのが見えた。
「1匹も釣れなくてヘコんでたんですって？も〜僕達の長男は本当に」
「だから僕達と一緒に料理しようって言ったんですよ」
「うん。どうやら海と相性が良くないみたい。船酔いもしちゃうしな」
Aヒョンはそう言って力なく笑う。
「本当に俺は、なーんにも出来ない長男だ」
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作者名：岡田 | 作成日時：2017年4月15日 9時
