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敦はまた電車にのり、或る駅で降りると、探偵社に急いだ。
はぁっ、はぁっと息を弾ませて。

倉庫街のあたりは静かで、周りに生きているものはなかった。立ち止まると、無数の闇に見られているような錯覚さえ起こす。

急いだのがいけなかった。

夜のとばりは完全に落ちきり、周りは射干玉(ぬばたま)のような闇が周りを囲っていた。
その時、足に引っかかるものがあると感じた時には遅かった。

「あっ」

体が前のめりになる。
咄嗟(とっさ)に身を庇うが、袋から手が離れ、袋は放物線を描いて落ちた。

どさり。

微かにパリンッという、嫌な音がした。

身を打ったズキズキとする痛みに、敦は顔をしかめた。そして、恐る恐る袋の中を見た。

__頼むから、割れていないでくれよ……

しかし、敦の願いは虚しく、箱の隙間からは蛍光灯の破片が飛び出ていた。

敦の頭は真っ白になった。
蛍光灯の中には毒が入っているとかいないとか……

「ああ……どうしよう……芥川に怒られる……」

敦は頭を抱えた。

ピコン♪と、場違いな音が鳴った。

敦さん、遅いけど大丈夫ですか?
ㅤㅤㅤㅤ19時57分
そのメッセージだけで敦の心臓はバクバクと鐘を打っていた。
震える指でメッセージを打ち込む。

大丈夫です
19時57分 既読

すぐにメッセージが返ってきた。

そうですか。よかったです お兄ちゃんが待っていますよ
ㅤㅤㅤㅤ19時58分

銀ちゃんの優しさが敦の心に刺さった。
敦は涙を堪え、走った。

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設定タグ:空白時 , 中島敦,芥川龍之介 , 文スト   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:空白時 | 作成日時:2021年11月26日 14時

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