14 大切だからわからない＊＊ ページ26
デイモンは、私に何ひとつ教えなかった。
いつもいつも悲しみなど見せず、私には笑顔しか向けなかった。
『君は知らなくていいんです、エレナ』
穏やかな口調の奥に、隠された辛さがあった。
私は彼を愛している、だから彼を知りたかった。
自分の裏側を見せない彼に苛立って悲しんで、彼に思いを叫びにして表せば、彼はいとも容易く崩れ落ちた。
『君を不安にさせて、すみませんでした』
『ただ、怖かったんです。恐れられるのが』
『血塗れになった僕に触れば、君まで真っ赤に染まってしまう気がして』
『……大切な君を、汚したくなかった』
苦しみを言葉に変え、キスの雨を降らせる彼が愛しかった。
この愛しさは、地球上の人間全てが殺されて感じる悲哀さえ上回ると思った。
あの時初めて、私はデイモン・スペードを愛する事が出来たのだ。
きっと今も、それと同じ。
「……リーア、貴女はどれだけその子を知っているの？」
腕の中でぴくりとも動かぬリーアに問えば、彼女の肩が大きく跳ねた。
「……誕生日も趣味も、好きな食べ物も、その子の生きていた世界の事も知らないでしょう？」
そう言えば、微かに首がこくりと上下する。
「そうでしょ？
貴女はその子を知らなくて、その子も貴女を知らなかった。
……貴女はその子が大好き。
なら、その子だって貴女が好きで、貴女の事をもっともっと知りたいって思ってるはずよ」
まさに昔のデイモンへの思いをそのまま言えば、リーアの肩が小刻みに震え始めた。
「…確かに、一般人にとって裏社会の事は厳しい理解が必要よ。
だけどそれは、リーア・フォートナードという一人の人間の一面を理解するって事」
リーアの頭を撫でながらゆっくりと話せば、暫くして嗚咽が漏れる。
「きっと異世界に来て心細かったでしょうね。
でも、貴女が少しでも寂しさを紛らわせてくれたんじゃない？」
リーアの涙がじんわりと服に染み込んでいく。
でも、私は頭を撫でるのを止めなかった。
「…だから貴女も、その子を受け止めてあげて。
その子自身の事も、その子の昔の世界の事も、
その子の笑顔も悲しみも受け入れてあげて。」
最後にそっと囁いた。
リーアと笑い合う、異世界の少女を想像しながら。
15 近づく闇と光を知った＊→←14 大切だからわからない＊
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 44人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
千桜(*_*)(プロフ) - 続きがとても気になります！続編楽しみです！ (2013年12月17日 10時) (
レス) id: e811a56b71 (このIDを非表示/違反報告)
音葉(プロフ) - このお話、とっても大好きです！更新楽しみにしてますね！！影ながら見守っています(=ﾟωﾟ)ﾉ (2013年7月29日 12時) (レス) id: 79ec10fac5 (このIDを非表示/違反報告)
霙@kutiki(プロフ) - ギャグ小説の方からジャンプしてきました！こっちもとても面白くて、続きがとても楽しみです！！更新頑張って下さい応援しています♪p(^-^)q (2013年7月21日 16時) (レス) id: 7b0e251a07 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夢霧 | 作成日時：2013年7月3日 17時
