10 似た者同士かもしれない＊ ページ17
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『ルーア、こっちにおいで』
『…大丈夫、母さんが守るわ』
『ハッ、運が悪かったんだよ!!』
『…ルーア、行くよ』
様々な声が混じりあう。
優しさも、悲しみも、嘲りも、覚悟も、全て。
その中で、今もはっきりと聞こえる声がある。
『…今、ここで選ぶんだ』
『弱者として、君が憎み続ける愚か者に這いつくばって生きるか、それとも、』
『強者として、君の持っていた幸せを壊した奴らを
嘲笑ってやるか』
僕らがついていくと決めたあの薄い微笑みは、
今も脳裏に焼き付いていて＿＿＿＿。
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重い頭を動かし、上体を起こす。
脳内に残る、忌々しくも懐かしい映像の余韻に浸りながら、枕元の時計を眺めた。
薄暗い視界で確認できたのは、普段の起床時間よりも一時間は早い時刻。
くしゃりと髪をかきあげ、再びシーツに体を倒す。
(…あの娘のせいですよ、きっと)
思い出すのは、頭の中へ流れ込んできたAの記憶と、暗闇の中で響いた甲高い悲鳴。
(…あの夢を久しぶりに見たのも、彼女のせい)
まったく、夢のせいで目が冴えてしまった。
妙な苛立ちを感じ、時計を見つめながら思い起こす。
優しくて辛くて、遠い遠い過去の事を＿＿＿。
＊＊＊＊
四六時中、カチカチと鳴り響く時計に囲まれたそこで、僕は育っていた。
『…父さん、どうして時計は止まらないの？』
『時は止まっちゃいけないからさ。絶対に』
『でも、父さんなら止められる？』
『物理的にだけ、ね。
でも、時は誰にも止められないし止まらない。
……ルーア、こっちにおいで』
そう言った父は、幼い僕を大きな古時計の前に
連れていった。
店の中で一番高価で、一番美しい古時計。
『時計と同じように、お前の心の針だって
止めてはいけないよ。
もし止まってしまった時は、動かしてくれる人がきっと現れるさ』
そう言った父は、ポカンとしていた僕の頭を撫でた。
まるで、今はまだわからなくていいと言うように。
「フォートナード時計店」
その場所が、僕の故郷だ。
可愛らしい妹と、柔らかな両親。
僕は、その日常を子供なりに愛していた。
しかし＿＿＿＿、
ある年の冬、幸せはいとも容易く崩れていくと知った。
10 似た者同士かもしれない＊＊→←９ 眠れぬ貴女に死の記憶＊＊
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千桜(*_*)(プロフ) - 続きがとても気になります！続編楽しみです！ (2013年12月17日 10時) (
レス) id: e811a56b71 (このIDを非表示/違反報告)
音葉(プロフ) - このお話、とっても大好きです！更新楽しみにしてますね！！影ながら見守っています(=ﾟωﾟ)ﾉ (2013年7月29日 12時) (レス) id: 79ec10fac5 (このIDを非表示/違反報告)
霙@kutiki(プロフ) - ギャグ小説の方からジャンプしてきました！こっちもとても面白くて、続きがとても楽しみです！！更新頑張って下さい応援しています♪p(^-^)q (2013年7月21日 16時) (レス) id: 7b0e251a07 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：夢霧 | 作成日時：2013年7月3日 17時
