悪役の善人 其ノ壱【※裏切り】

如月が嫌う所以 ページ26

〜如月side〜



ーーやっと見つけたんだ。

貴女に恩返しをする方法ーー



「黒城……！！」

隣で今にも人を殺してしまいそうな顔の皐月を見る。

……皐月の気持ちはよく分かる。


彼女は…黒城美幸は、禁句を口にした。

俺達の“師範”であり“姉”であるAを馬鹿にしたのだ。

あの人はそんな事をしない。

第一、お前のせいであの人は嫌われるようになったというのに。

“捨て子”の俺達を拾ってくれたAを馬鹿にする事は、俺達を直接馬鹿にするのと同義。

そのくせに俺達に泣きつく？

笑止千万、その手は払い除けるに限る。


Aに、もしもの時の為に、と教えられた“性格の演じ方”を、こんなところで使うとは思わなかった。

…周りの話を聞いて、Aが嫌われる理由なのが黒城なのには気付いてはいたんだ。

合同任務の時、溢れ出そうな殺意を抑え込んで、普段と変わらぬように振る舞った。

“嘘を吐く者は他者の嘘にも敏感である”という話を耳にしたが、黒城は一切気付く様子が無く、結局最後まで、偽物の涙を流すという始末。

……馬鹿なのだろうか、と心から思ってしまった。


そもそも、自分の発言が矛盾している事に気付かないのだろうか？

黒城は、“弱いので守ってほしい”と言った。

だというのに、鬼殺隊に入った理由が“鬼に復讐をするため”？

まず、他者に守ってもらうなど甘ったれた考えを持つ者が鬼殺隊にいる事自体おかしい。

さらに、復讐のために入ったという嘘を吐くのであれば、その嘘を暴かれないよう少しは発言を考えるべきだった。

黒城は愚か者だと、俺は思う。


だから俺は、黒城美幸を嫌うんだ。

美幸は気付かない→←皐月が嫌う所以

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