悪役の善人 其ノ壱【※裏切り】

悪役が慕われる所以 其ノ伍 ページ8

〜Aside〜

「っ……」

…少し掠りましたかね……

「お前……な、んで…」

「え…ん……？もう少しで首斬れそうやったのに、何でわざわざソイツの事守ったん？」

心底不思議そうに、鬼が聞いてきた。

そんな変なことじゃないと思うのですが……

「仲間を守ることは、そんなにおかしな事かしら？」

「！！」

四人が息を呑んだ音がした。

「やけどアンタ、ソイツらに随分嫌われとったやないか」

「関係ある？」

「は…？関係あるやろ。自分の事嫌いな奴よ？」

まぁ、私は事情が特殊ですからね。

「目の前で仲間を見殺しにするような真似はしたくない。

助けられる命がそこにあるなら、私は自分の命を賭けてでも守り抜く！」

結に高速で近付く。

「甘い、甘い考えやわぁ」

「甘くて結構！自覚済みよ！

『白の呼吸 弐ノ型 白霧(はくぶ)』！」

結の首に刃が届き、ごろりと首が落ちる。

「ぃ、たく…ない……？」

「そういう型だもの。

アンタからは恐怖の気配がしてたし。

さようなら」

「あ…りが、と……ぅ……」

結は涙を流しながら、さらさらと消えていった。

「鬼に慈悲掛けるん？アンタこそ阿呆やろ」

「えぇ、私は阿呆よ」

悪役にさせられ、皆から嫌われても尚、鬼殺隊を辞めないくらいには。

「さて、余裕そうな顔しとるけど、もう毒が回ってきて厳しいんとちゃう？」

「お前、毒くらって…！？」

実は、さっきの掠り傷から毒を入れられていた。

「……正直、今すぐ倒れてしまいたいくらい厳しいわ…」

う…視界がぐらついてきた……

「やったら、そこの四人ウチに渡してや。

そしたらその毒抜いたるで？

ウチ、男を散々痛めつけてから食べるんが好きなんよ」

………は？

「………………ふざけるな」

「おお？本気んなった？」

「死んでしまえ、悪鬼めが！

『白の呼吸 漆ノ型 白河夜舟(しらかわよふね)』ーー！！」

踏み込み、鬼の首を斬る。

「ん…？何も変わっとらん…？何や今の」

「………………。」

「…ぁ…れ………？何、で、視界が…地面に……？」

漆ノ型 白河夜舟は、相手が攻撃を受けても、何が起こったのか理解できない型だ。

この場合だと、鬼は私に首を斬られた事に気付かずに死に至っている。

「さようなら」

「ま、さか…斬られ……」

最後まで言いきれずに鬼は灰と化した。

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