Wolf Ⅱ (ページ50)

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狼ページ50

＊

私は無力なんだ...
私は無力...

「私はっ...なに...？」

涙で歪む視界の先は見覚えがあった

明るめの照明、大きな交差点
この嵐のせいで人は全くいなかった

“センター街”

そんな街のど真ん中で、私は足から崩れ落ちた

「私はっ...私はっ...！？」

足に地面の冷たさが滲み込んだのを合図かのように、私の頭は混乱した

体が雨に打たれる
髪の毛から雫が伝い、首へ...
冷たさなんて麻痺して徐々に感じなくなっていった

「北人さんっ...」

私には...

「慎っ...」

名前を呼ぶことしか出来ないんだ

「北人さんっ...！！慎っ...！！」

私は無力なんだ

「北人っさんっ...！！！慎...！！＿＿＿うぅっ...」

泣き声と共にその叫びは儚く散ってゆく
そんな程度なのだ、私など
私なんて...

“生きてる意味ない”

私っ...

「死にたいっ...」

その心の叫びも暗い冷たい空へ消えていく

そう思った、その時...

・

・

『俺の名前は呼んでくれないの？』

「＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿えっ」

下を向く視線内に黒い靴が映った
そして頭上から降りかかるその声...

私は顔をゆっくりあげた
それと同時に目の前にある人影が、私の目線までしゃがみ込んだ

黒いパーカーが見えた
目にかかる前髪が見えた
黒く染ってないその瞳が見えた

・

「なんでっ...」

わたしの口から言葉が出ると、目に映る彼の瞳が揺れた

『北人、慎とか...。もう他の男に行ったん？』

口角を上げ、少し悪戯そうに言った彼
でも、

「壱馬っ...」

そう私が発した瞬間、その口角は元に戻った
そして何度待ち焦がれた...彼の手のひらが...
私の濡れた髪の毛を、濡れた頭を撫でた
優しく...

そのままその手のひらは私の後頭部に回り、ぐっと力が込められる

引き寄せられ、触れ合った体
これ以上ないってくらいのぬくもりを感じた
私の口からは耐えきれなくなった嗚咽と、目からは熱い涙が溢れだしてきた

「＿＿＿＿＿＿＿会いたかったっ...」

私は彼の背中に手を回す

『俺も...』

その声を耳に、遠のく意識の中幸せを感じた

・

・

＊＊＊＊＊＊＊＊＊

一人の少女を抱き上げる狼は

闇の中へと足を進めた...

雨に打たれた彼は今や赤く染まった殺し屋では無い

黒く染まった殺し屋なのだ...

それを彼女は知らない...

＊

移行します！

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