Wolf Ⅱ (ページ47)

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一言一句鮮明に覚えている慎の言葉...。

まさか...

掟を破ったら殺される...
じゃあ北人さんは...？

「そんなの嫌だっ...！！」

『Aちゃん...』

「嫌だっ！！北人さんも逃げるの！！」

『ダメなんだって...』

「ダメじゃない、失うなんて嫌だっ...！！」

これ以上誰かを失うのが嫌だった...

“睡眠薬...”

あの時は何が何だか分からなかった。

でも何となくわかった気がする...。
番人界へのハッキングを北人さんがしてるって分かったら、私はいち早く止めた...
だから北人さんは私には気づかれないように私を眠らせて...

何が北人さんにそうさせたか分からない...
でもどうとも言えど

“こうさせたのは私のせいだ”

「私のせいでっ...、北人さんを失うのは嫌だっ...！！！」

私は北人さんに思いっきり抱きついた

ぎゅうっと抱きしめ、離れないように強く強く力を込めた...
でも、北人さんは男
力では勝てるはずがない

縋りつく私を力を適度に込めて離れさせると、
泣いてぐちゃぐちゃになった私の顔を覗き込んだ

『俺は...、Aを失いたくない...』

涙の中見えたその顔は、柔らかくなんかなくて、怖くなんかもなくて
ただ何かを決心したように力がこもっていた

そして離れさせたのにも関わらず、北人さんは私を抱き寄せた...
背中に優しく手を伝わらせ、上下に撫で始める

鼻をくすぐる優しい匂いに涙が大きく誘われた

『慎...』

頭上で北人さんの声が聞こえた

『Aを頼んだから...』

『北人さん...』

慎の困ったような切ないような声が響いた
その次の瞬間、ﾍﾞﾘｯと音がつくように無理やり私を引き離した北人さん

私は何もする間もなく、北人さんを離してしまった

そして...

背後から私の体を勢いよく抱き上げた...

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿慎

一気に高くなった視線と、離れた北人さんの温もり

「やめてっ...！慎！離してっ...！！」

そしてどんどん距離が広がっていく北人さんと私たちの間

慎が私を抱えて走る度、私の体に振動が加わった
そしてその都度涙が零れて止まらず、
私は諦めきれずずっと慎の体を思いっきり叩いた

“おろして”
そう哀願しても慎はおろそうとしなかった。

『Aちゃん、逃げて！！！』

涙でくすむ視界の中、再び“ちゃん”付けで私を呼んだ北人さんの表情を

私は忘れない＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

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