Wolf Ⅱ (ページ44)

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部屋から足を踏み出すと、久しぶりの光が体を包んだ。
久しぶりすぎて体は自然と縮こまり、
先ほどまで暗闇に慣れていた目はチカチカと怯んだ。

そんな中でも一歩ずつ前へ足を出す。
その度に暖かくない床の感触が足裏を通って、体を巡った

チカチカした視界が戻るまで手探りで歩いていたが、
だいぶ目が晴れてくると目の前には北人さんのパソコンとディスクが映った。

「...？」

もちろんそこに北人さんはいる訳で...
でも見える背中はいつもの雰囲気とは異なり、どうも違和感を感じた

「北人っ...さん？」

そんな背中に話しかけるのはだいぶ勇気がいるのだが、
今回ばかりはガラついた声が恥じらいを知らない

きっとこの雰囲気と慎のあの様子が関係あるのでは...
そう馬鹿な頭なりに考えているから

「えっ...？」

だから私は北人さんに、慎のことを追求するつもりだった。
でも声掛けてから幾度と待っても、北人さんは反応してくれなかった。

そればかりかキーボードを打つ手を止めない

「北人さん...！！」

微動だにしないその背中に再び声を出した
次は必ず聞こえるような大きな声で

声の余韻が消えると、一瞬止まったキーボード音
そして、そのまま動き出した...

無視された...？
聞こえてるはずなのに...、キーボード止めたのに...

そうマイナスの感情、北人さんに対する責めが頭を貫いたその時...

『睡眠薬...もう効果切れたんだ...』

そんなくらい声が鼓膜を揺らした

「はっ...？」

睡眠薬...？
北人さんの言葉、そしてこちらを振り向かず放たれた冷たいトーン
見えない表情...

怖かった

「何言って...」

『黙ってくんない...？』

怖かった...。

だからその声に私は何も言うことができず、その場に立ち竦んだ

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どのくらい時間が経っただろうか

ついていけない頭がパンク寸前で、呆然と北人さんを見つめることしか出来ない
瞬きを忘れたかのように、視線が逸らせなかった
魂が抜けたかのように色を失っている私の目には、不自然なその北人さんの背中しか映ってない...

とその瞬間、

一気に北人さんの座る椅子が180度回転し、先程まで見えなかった表情が私の目に映り、
淡々と鳴り響いていたキーボード音がついにやんだ。

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