Wolf Ⅱ (ページ31)

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私の耳に入るのは、慎の小さな嗚咽と鼻をすする音。
彼の涙が私の髪の毛をつたい、肌に当たって流れていく。
冷たくて、でもなんか温かくて。
慎の涙の一つ一つが私の心にも落ちていった...。

「ごめんねっ、？心配かけっ...！」

彼の姿に、“私がこうしてしまった”という罪悪感が襲うと共に
私は苦しい息の中で声を出し、慎の背中に手を回した。

でもその言葉は最後まで言えず、
本当に息が出来ないほどまで抱きすくめられ、声を出すことも無可能と化した。

『＿＿＿＿＿＿＿ぃい』

「...？」

『謝んなくていいっ。だからもうっ...。』

慎の声が周りの静けさによって鮮明に聞こえた。

今まで聞いたことも無いその声に再び自分への責めの言葉が脳裏を過った。

私は泣いて震える慎の背中をゆっくりとさすった。ゆっくり...。

すると抱きしめる力が少しずつ弱くなり、私の声が発することができる程まで弱まった。

でもまだ聞こえてくる慎のすすり泣き

私は緩まる腕の中、自分で慎の背中に手を回し、背中を摩ることをやめなかった。

そしてそんな私の耳に慎の声が切なげに響いた。

『離れてかないで...』

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＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

『寒くない？』

「うん」

『疲れてない？』

「＿＿＿＿＿うん...」

私の体を離した慎は私の手を軽く引いて帰路を少しずつ歩きはじめた。

先程の切ない声が嘘のように、普通に優しく振る舞う彼。

私にかけてくれる一つ一つの言葉が何故か私の心をもやもやさせた。

先を歩く慎はこちらを見ない。
力を込めただけで離れてしまいそうな程、ゆるく緩く絡んでいるお互いの指は
2人の心の繋がりを表してるかのようだった。

『ねぇ...』

「...」

後ろを歩いていた私は目を向けるところがなくてそのまま俯いていた。

見えていたのはとぼとぼと重い足取りで動く体と服についている真っ赤なもの。

“赤いもの”
それのつく服が風邪で揺れる度に、涙が零れそうだった。

我慢して我慢して、どうにかさっきのことを思い出さないようにしていた

そんな時、足取りはそのまま、前から聞こえた慎の声。
涙で埋まる記憶へ向かう途中、その声で元へと引き戻された。

『＿＿＿＿＿北人さん、なんか言ってた？』

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