Wolf Ⅱ (ページ14)

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「ほんとありがとう...」

『気にしないでいいから』

人混みなんて何年ぶりだろう。

お昼真っ只中で混むセンター街で、私は慎に必死で頭を下げた。

私の足には新品の靴。
安いのでいいって言ったのに、彼がそれを聞かず、真剣に選んでくれた。
それも高いやつ...。

『食材買って帰ってから、お昼にしようか』

「そうだね。」

『久しぶりに北人さんも一緒に食べれたらいいね』

「じゃあ、お昼はネギタン塩？笑」

『いやぁ、重いな』

そんな他愛もない話をしながら、スーパーへと足を進める慎に着いて行った。

でもあまりに人が多すぎて上手く進めない。

ドンッ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

それに、肩もよくぶつかる...。

「すみませっ...。えっ」

ぶつかった相手は振り返らず、こちらに見向きもせず、ただ足早に歩いていた。

思わず振り返って見えた後ろ姿は既に離れていた。

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足が止まり、反転させた体を進行方向に戻せない。

視界に映る後ろ姿から目が離せない。

上手く立てず、膝がガクガクと音を立て、
私はそのまま人混みの中で膝をおりしゃがみこむ。

どんなに一瞬でも分かる。

二度と会えないって思ってた背中なんて見たらすぐ分かる...。

黒いパーカーにフードを被ったその姿は、周りの世界を止まってみせた。

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「かずっ...ま...？」

人の賑わいの声なんて聞こえなかった。
周りなんて見えなかった。

ただ頬に涙がこぼれる感覚がしただけ...。

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