Wolf (ページ40)

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「嘘だっ...」

心は歩きたいと言ってるのに体は言うことを聞かず、そのせいで足できちんとその場に立てない。

フラフラとした足取りで一歩一歩、倒れそうになりながら中へと足を進めた。
足音が倉庫に響き、その音から北人さんが後ろから着いてきてることもわかった。

少しずつ少しずつ鮮明に瞳に映った景色。

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「そんな、嘘だ。嘘だっ！！」

歩きながら流したこともない量の涙が頬を伝う。

信じたくない、嘘であってほしい。
後ろを歩いていた北人さんの足音も駆け足になった。

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「なんでっ」

私は膝をつき、その場に立っていられなくなった。

私の膝の下には真っ赤に染る床。
涙を誘う血の匂い。

そして...

床に手をつくと触れたネックレス。

『これっ、壱馬の...。』

私の隣にしゃがみ込んだ北人さんは切れたネックレスを拾う。
ネックレスに通る大きい十字架が揺れた。

その瞬間、彼に抱きしめられた時の記憶が頭に過ぎる。
彼の胸元で輝く十字架。
そして強く抱きしめられた時、その十字架は私の頬にあたり、
ひんやりとした感覚を与えた。

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「ねぇ、嘘...」

『この血、新しいっ...』

床に触れる北人さんの声も震えていた。

『壱馬は...、殺しの現場に自分の証拠を残さない...』

その言葉はあることを物語る。
それを理解した瞬間、私の涙が血の上に流れ落ちた。

彼が殺したのなら、血なんて、ネックレスなんて、

こんな所にない。

・

『壱馬、嘘だろ...？』

北人さんが流した涙。
その涙も落ちて、赤く染る床を濡らした。

「待ってよ、離れないって言ったじゃん...。
心配しなくていいって言ったじゃん。」

涙で視界が滲む。

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「いやぁぁぁぁぁ＿＿＿＿＿＿＿」

静かな誰もいない倉庫に、私の叫び声が響いた。

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