Wolf (ページ29)

今日:11 hit、昨日:125 hit、合計:523,763 hit

這い上がる記憶ページ29

＊

驚きのあまり目を見開く私の視界には
ぼやけているのにも関わらず整っているとわかる彼の顔
閉じている目からは長い睫毛

特別意識してきていなかったが、なぜか今些細なことすべてが妖しく魅力的に見えてしまう。

_______________くちゅっ…

そんなイヤラシイ音が鳴るたび、頭に響く。

「んっ…ふぅ…」
『はぁ…』

お互いの鼻から吐息が抜ける。
目の前にいるのはあいつじゃない…
でもチラチラと頭をよぎり始めた残酷な記憶が、彼の体を押して抵抗する手に力を込めた。

さっきまで平気だったあの記憶が、少しずつ少しずつ流れ込んでくる...。

瞳に映るのはあんな行為じゃないのに、彼があいつと重なって見えてしまう。
こんな自分がどんどん嫌になって、唇を離そうと顎を引いた。

でもその全ての抵抗は彼の行動によって水の泡となる。
体を押す手は怪我をしてない手で動きを封じられ、
顎を引いても彼はその動きに沿って顔の角度を変えた。

無駄な抵抗のせいで余計に深くなったキスに頭がどんどんぼーっとしてくる。

いつのまにか割られていた口の隙間から、ヌルっという暖かい感触が体を支配し、虜にした。

彼の舌は器用に口の中で動くと私の舌を絡め取る。
さっきよりも脳内に鮮明に響く水音が、背筋をゾクゾクさせた。

・