紐解く。 ページ41
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はたと我に返ったお兄ちゃんはようやく口を閉ざし、硝子ちゃんの連写攻撃を手で塞ぎ始めた。
む、と一文字に結ばれた口元から私がいかに彼を心配させてしまったかがわかる。
『…心配かけてごめんなさい、お兄ちゃん』
頭を深く下げる。
お兄ちゃんはしばらく何も言わなかったが、静かに顔を上げてくださいという声が聞こえた。
そっと顔を上げると、視界が真っ暗になった。お兄ちゃんの黒い制服が顔の前にあった。
「色々言いたいことはありますが、無事で何よりです。…友達を守るためによく頑張りましたね、A。
誇ってください、あなたは五人の人間の命を助けたんです」
優しい声に涙が溢れそうになる。お兄ちゃんの背中に手を回した。
『怖かったけど、助けてよかったです。』
「そうですね。…でももっと自分を大切にしてください。あなたが死んだら泣く人はたくさんいるんですから」
ぽんぽんと頭を撫でられながら頷き、私は涙を拭った。
「…それから、あのオバケのことですが…」
『!そうだ、お兄ちゃんはあれと戦えるんですか?悟くんも戦えるみたいだったけど、』
お兄ちゃんは一つ頷いて、それからいろいろなことを話してくれた。
お兄ちゃんや悟くんは「オバケ」…基「呪霊」を祓う仕事をしていること。呪術高専はその方法を学ぶための学校なこと。
それから私の体質。
昔から異常なまでに優れた運動神経は「天与呪縛」という生まれ持っての才能であること。
お兄ちゃんが持ってる術式や呪力を持たない代わりの運動神経。
本来なら御三家と言われるお家の人以外で出るのはレアだけど、うちの家系は呪術師の家系じゃないからありえない話ではないということらしい。
『だから戦えたんですね』
「そういうことです」
今まで秘密にしていて申し訳ない、とお兄ちゃんが頭を下げる。私は首を横に振った。
お兄ちゃんが私を避けていた意味も、理由も、いま全てがわかったから。私がお兄ちゃんでもきっと同じことをしただろう。
『守ってくれてありがとう、お兄ちゃん』
「そんな大層なものではありませんよ」
少し照れたように顔を赤くしてそっぽを向いたお兄ちゃんにもう一度抱きついた。
「そーだ、動けそうならここに行ってあげてほしいんだけど」
硝子ちゃんがすっと紙を差し出した。
『地図?』
「そ。待ってると思うから、行ってあげて」
よくわからないが、私はそっと頷いた。
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lokiloki - こちらの作品をとても気に入ったのでプレイリストに載せさせてもらいます ※自分の作品を消したい場合はお手数をかけますがプレイリストの 【おもしろ度を投票】の上にある 【リストから削除】からやるか、プレイリストのコメントから作者に言ってください (12月15日 16時) (レス) @page3 id: 7de4ffbd52 (このIDを非表示/違反報告)
眠民。_ねむみん。 - 凄く面白いしいい作品でした~!!作者さんってもしかして最強!?これからも応援してます!ステキな作品ありがとうございました!! (11月19日 11時) (レス) @page45 id: 03ba19f866 (このIDを非表示/違反報告)
かけたま - こんなにも面白い作品を生み出すあなたは(^^)最強か? これからも応援させて頂きます。 頑張って!! (2021年12月12日 0時) (レス) id: a9aad67263 (このIDを非表示/違反報告)
猫餅 - 体長が体調になっています。>"< (2021年8月11日 20時) (レス) id: 3a7b856aca (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬ(プロフ) - 素敵な作品私ありがとうございました。とても面白かったです! (2021年4月26日 11時) (レス) id: 7168c245e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:宙 | 作成日時:2020年12月31日 14時