拗らせ症候群。Mizuki.I (ページ5)

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結局瑞稀達の言葉の意味は分からないままで放課後になってしまった。

今日は図書委員の当番の日。

ほとんど人がいない図書室のカウンターで、絡みづらい後輩くんと2人で並んで座っていた。

「何回目ですかそれ」

「………え、何が？私？」

「他に誰がいるんすか。ため息、今日多いっすよ」

長めの前髪の間から覗かれる切れ長な目。

人の名前を覚えるのは生憎苦手で、後輩くんと心の中で呼んでいたからか会話をするのもたどたどしい。

…業務連絡以外したことないし。

「先輩、俺の名前覚えてないっしょ」

「え、」

「図星」

「ご、ごめん！えーと…い、」

「イガリです。名簿見といて答えられないとか末期っすよ」

机の上の委員名簿を盗み見したけど答えられなかったのはバレてたみたい。

だって、猪を狩るで猪狩って、なかなかいない苗字だし。

しょうがないじゃんなんて悪態をつく。

そういえば、戌井と猪狩で「干支同士だねー」なんて理由で一緒にされたんだった。

「イガリソウヤって読むんで、覚えてくださいね」

「珍しい苗字だね」

「よく言われます。A先輩みたいな馬鹿な人は読めないですよね」

「え、私先輩なんだけど…」

「人の名前覚えないのがいけないんですよ」

「猪狩くん、よく私の名前覚えてたね？」

「だから普通です！…あっ、」

「ふふ、しーっ」

少ないとはいえ、一応人はいる。

あーもう！と頭をかいた猪狩くんに反応してみんなの目線がカウンターへ向くと、我に返ったみたいで。

口元に指を持ってこれば、すいません、なんて小さく謝られた。

後輩くん、基、猪狩くん。

結構いい子かもしれない。

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