恋する理由【Nino】 (ページ30)

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30:伝えたいことページ30

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「カズの方が、私なんかよりもっとずっと背負うものは大きいし。
持たれるイメージを崩さない様にとか、いろいろねあると思うの」

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伝わるかな。

伝わるといいな。

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「私なんて、会社で”鉄の女”って言われてたんだから(笑)
涙なんて流さない、仕事人間って」

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ねぇ、カズ。

我慢しなくてもいいんだよ。

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「周りにどう思われてもいいけど・・・恋人にはせめて本当の自分を
見せたかったなぁ。弱くて、すぐ泣いちゃう自分をね」

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「あたしね、酔ってたにしても一応初めて会ったカズに
どうして躊躇わずに自分を曝け出せたのか考えたの」

和「・・・」

「知りたい？」

和「別に」

「えー気になるくせにー(笑)」

和「言いてぇなら言えや(笑)」

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ゆっくりと瞬きを一度してから、カズの方を向く。

ドキドキと激しく打つ鼓動で、震えそうになる声を整える。

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「カズ、だからだよ？」

和「・・・は？」

「アイドルだからとか、毒舌だからとか(笑)？うぅん、関係ない」

和「・・・」

「カズなら、どんなみっともないあたしでも受け止めてくれるって
多分もうあの時感じてたんだと思う」

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口では、ツンツンしたことばかり言っても。

いつでもカズの声はあったかかった。

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私の頭を叩く手も、ときどき蹴飛ばすその足も。

いつもちゃんと加減してくれて、あったかかった。

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毎日、やることを山のように押し付けるのは。

考えたり、落ち込まずにいるようにとの気遣いだとある日気づいた。

思い出す記憶に、一人で私が押しつぶされない様に

くだらないメールでケンカをふっかけてくることも。

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「あたしも・・・あたしだって、バカだけど受け止められるから」

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忙しい時間の合間をぬって、カズは毎日必ず連絡くれた。

面倒くさそうな声で、俺は何時に帰るよ、と。

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あたしを、けして一人にしなかった。

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「あたしの前くらい、無理しなくていいよ・・・」

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上手く伝えられないもどかしさが涙で零れ落ちる。

ミとファの間に吸い込まれた滴を、カズのパーカーの袖で拭った。

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