恋する理由【Nino】 (ページ22)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:1,391,939 hit

22:舞い戻る時間ページ22

・

・

新しい年は、マスターと迎えた。

カズは”年の最後の大仕事”に行っていたし、翌元旦も実家に寄るから
家に戻るのは夜になる、だから好きに過ごせと言われた。

・

・・・・・割りに。

・

やることリストのメモは、ちゃっかり冷蔵庫に貼られていた。

・

・

・

・

マスターは、私の生活ぶりを聞いて楽しそうに笑っていた。

”なんとなく、似たもの同士だからうまくいきそうだと思ったよ”

なんてうなづいて笑うから、どこがよ！と言いそうになった。

・

・

・

・

日付を越えて、年を越えて。

フラフラと歩く帰り道は冷たく澄んでいた。

同僚だった友人や、仲良しの子から次々と電話やメールがきて

その通話や返信をしながら、ゆっくり酔いをさます。

・

・

落ち着いたら飲もう、ご飯いこう。

そう誘ってくれる暖かい言葉に新年早々ほっこりする。

なのに、そんな気持ちを一気に冷やすかのような

突然届いたメールの差出人の名前に、足が止まった。

・

・

・

ナオト。

・

・

・

通り過ぎた去年の記憶が、ゆっくりと今年に舞い戻る。

小骨のように心に刺さって、いつまでも抜けない記憶。

ケリをつけないまま、逃げて過ごしていたんだった。

・

・

・

・

そっけない文章が、今はさらにそっけなく感じた。

必ず1行開けて書く癖。

その隙間にすら、もう入り込めない距離を感じた。

・

・

・

・

残りの私の荷物を箱に詰めたこと。

とりに来る日がわかれば、玄関に置いておくこと。

鍵はその時、置いていっくれればいいと。

・

・

・

・

最後に付け足しのように書かれた

”あけましておめでとう”

の言葉に。

・

・

・

何があけたのか。

なにがおめでとうなのか。

・

・

・

悲しみの怒りが、涙でこみ上げそうになったとき

電話が鳴った。

・