【恋うた】Disc 1 (ページ49)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:62,123 hit

10 ページ49

.

「…う……」

ふわふわしてる意識が徐々に浮上した。

額に冷たい何かが付いてる…
ふかふかのお布団、暖かい…

ここは、俺の部屋か…
…いま何時…？

さっき、薮がいたのは、夢なの…？

しばらくボーとしてると、カチャッて音が立てて、部屋のドアが開いた。

「伊野尾？目ぇ覚めた？」
部屋着姿の薮がお茶碗とグラスを載せたトレイを運んできた。

「あれ…？ゆめじゃ…ない……」

「はは、何言ってんだよ。まぁ、ずっと寝てたもんな、起きれる？」

背中を支えて起こして、グラスを口元まで持ってくれたから、一口お白湯を飲んだ。
喉が痛い…身体中の肌が火照ってムズムズしてる…

「病院行ったの…やっぱり覚えてないかー」薮はタオルで額と首元を拭いてくれた。「伊野尾、風疹だってよ。熱も40度くらいあって…そうだ体温！体温測ろう！」

慌てて体温計取った薮の手首を思わず掴んだ。

「…だめ…」

「ん？何がダメなの？」

なにって…そんなの…

「…うつ…ちゃうから……やぶ、帰らないと…」

「何バカなこと言ってんだよ、帰るわけないだろう？」薮は笑いだした。そしてそっと俺の手をどかし、体温計を脇に挟んでくれた。「俺はちっちゃい頃罹れる病気一通り罹ったから免疫あるよ。それよりあきちゃんが感染られるかもしれんから、とりあえず俺んち泊まることにした」

あ…妹のこと、すっかり忘れてた…

不安だったろうな…また何かお詫びでもしないと…

ピピッと体温計が鳴った。

「39.3…まだ高いな」ぎこちない手つきで冷却シートを変えてくれて、「とにかく、皮疹が消えるまで泊めてもらうから、俺で我慢しろ」

そう言ってふにゃっと微笑んだ。

嘘だ…

薮と二人なんて…我慢どころか、幸せすぎるよ…

あれから薮のお母さんが作ってくれた卵粥を少し食べて、薬も飲んで。
お風呂に入る気力はないから、薮に温めたタオルで体を拭いてもらって、パジャマを着替えた。

久々の高熱だから体はかなり辛いけど、心がポカポカしてて、浮かれて。

ベッドに横たわって微睡みながら、俺の勉強机に向かって宿題を取り組む薮の後ろ姿を眺める。
机の横、床に薮のスクールバッグと大きめのリュックがおいてある。ただそれだけなのに、なんかすごく安心して、顔が綻びそうになる。

ああ、嘘じゃないんだって。本当に、そばにいてくれるんだって。

.

変なところで移行するかもしれません…あらかじめご了承ください＜(_ _)＞