【恋うた】Disc 1 (ページ43)

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「聞いてないよそんなの！」

「だって事前に言ったらいのちゃん絶対来てくれないもん」

「当たり前だ！イメチェンとかするつもりないし！」

「何でだよ～せっかく顔可愛いのに、いつまでもふさふさヘアでいたら勿体無いじゃん～」

「可愛いとか言うな！」

男だから可愛いって言われても嬉しくない。いや、むしろ不快感しかない。
この女顔のせいで散々いじめられたから、とか言ったらアホらしいけど…

「まあまあ～せっかく来たからいいじゃん。いのちゃん、髪へのこだわりないでしょ？」

「…そりゃ…ない…けど……」

「しかも無料だよ？やってみよーよ～」

“うちの兄貴、デビューしたばっかだけど、腕は保証するから”って、めっちゃニコニコしてる光にそう言われたら、頑なに断ることができなくなっちゃった。

散髪に行く時いつも30分くらいしかかからないのに、その日はカットしてもらって、もう終わりかなと思いきやまた絵の具みたいなものをつけられて一時間待たされ、そろそろいいかなと思ったら今度は匂いが強い薬剤みたいな液体をかけられて、何用なのか全然分からない機械で髪の毛を加熱された。

時間長いし、頭があたっかくなったからか、いつの間にか居眠りしてた。

「伊野尾くん、お疲れ様、終わりましたよ」
肩をトントンされて、目を開ける。

鏡に写っている自分を見て、固まった。

え…？

この人、俺なの…？

「完成した～？どれどれ…って！いのちゃんかわいい！えっマジ可愛いんだけど！！」
お兄さんの声を聞いてやってくる光もかなり驚いたようで。

真っ黒だった長めの髪は落ち着いた茶色に染め上げ、パーマをかけられてふわふわしてて、全体的に丸いシルエット。

陰キャラだから前髪ずっと片目隠してるくらいの長さだったけど、それもバッサリ切られて、今は眉毛が隠れてるくらい、俺にとってはかなり短い長さになった。

…なにこれ…なんでこうなったの…

こんなんじゃ…

「可愛いだろ？伊野尾くん顔が可愛いからやってみたけど、いやー我ながら天才だわ！女の子みたい！」

「ちょっと兄ちゃん、そんな事いうなよ！」

俺が気にしてるのを知ってる光はお兄さんにグーパンを飛ばした。

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