【恋うた】Disc 1 (ページ41)

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「ああ！何食べてんだよ薮！！」

「無駄だよ？こいつ絶対食べてくれないから諦めよ」

「もう～薮が甘やかしすぎるからこうなったじゃん！」

「はぁ？甘やかすなんてしてねえし！」

また言い合いが始まった。ていうか内容がもはや夫婦ケンカ。
ほんと、息ぴったりだな…

初めて誘ったその日から、自然の流れで昼飯は三人で食べることになった。

知り合って間もないのに、ずっと俺と薮だけだった空間にすぐ溶け込んで、昔から知ってるような親近感を感じさせたのは、光の明るさのおかげなのか、それとも単に三人の波長が合うだけなのか。

そんなの考えても分かるはずがないから深入りもしないけど、不思議に光の隣が居心地がよくて、気づけば休憩時間とか移動の時とか光が声をかけてくれて、一緒にすることもいつの間にか慣れた自分がいる。

自分が言うのもあれだけど…時々、“保護者”が二人になった気もする。

「薮も薮だよ！トマト食べれないなんて子供じゃねんだから！」

「た、食べれるし！こいつトマト好きだからあげただけだし！」

「うっわ、いのちゃんのせいにするなよ！」

「うぜぇー誰でもあるでしょうよ食べれないものとか1つや2つ！」

「いや、俺はぜんっぜん？何でも食べれるけど？？」

「よう言うよネコに怖がるくせに！」

「ネコは食べ物じゃねぇし！！」

だんだんヒートアップしてきた言い合いを麦茶を飲みながら半笑いで見てると、薮と目があって、そしたらニヤッと薮が口角を上げて…

またあれかよ。面白いけどよく飽きないな。

弁当と口喧嘩に夢中(？)の光の後ろに静かにしゃがみ込んで、そして不意に「…にゃあ！！」って両手を薄っぺらい肩の上に載せるという、たぶん猫嫌いな光しか反応してくれないくだらないイタズラ。

「うわああ！！！！んだよ！やめろよおめぇら！！！」

何回仕掛けてもこうやっていいリアクションしてくれるから、やめられないよね。

思わず大笑いしたから怒ったふりの光に捕まって、「やだ！！やぶぅ～助けて～～」って、大根並みの泣き演技をして、首謀者である薮も爆笑しながら俺を救出し、“イェーイ”って両手ハイタッチしてくれた。

バカげたことをやって、笑い合って、時々些細なことで喧嘩して、また仲直りして。

2人の世界が3人目の光が仲間入りしてから、たくさん変わった。

そんな単純で楽しい毎日がいつまでも続くと、その頃の俺は本気で信じてた。

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