【恋うた】Disc 1 (ページ34)

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「いのちゃん、ここ、こう触られても大丈夫そう？」
光は俺の眉間辺りを触って聞いた。

“いのちゃん…？？？”って、薮のはてな3つぐらい付いてそうな呟きが聞こえて、一瞬笑っちゃいそうになったけど痛みに負けてしまい、頭だけ小さくコクッとした。

「そっか、じゃあ頭下向いたままでいいからここ、少し力入れて押さえてて」

言われた通り鼻の付け根を押さえ、更に薮に“歩ける？”と聞かれて頷いたら、二人の手伝いをもらいながらなんとか保健室にたどり着いた。

「そういえば…」保健室の先生からもらった氷袋を俺に持たせて、薮はなにか思い出したようで光に声をかけた。「はじめまして…だよね？伊野尾と同じクラスなん？」

そっか、波瀾万丈(？)の出会いだから、この二人互いの名前すら知らなかったか。

「光は…「ああ～いのちゃんはまだ喋らないで！自己紹介ぐらい自分でできるよ！」
説明しようとしたらとっさに光に止められた。

「俺、いのちゃんと同じクラスの八乙女光。今日転校してきたけど、よろしくね！」
ニカッと可愛い八重歯を見せて、薮に左手を差し出した。

「なるほどー転校生なんだ。本当にはじめましてじゃん！」薮はいつものふにゃふにゃしてる笑顔で返事をした。「俺は三組の薮宏太。コイツの幼馴染兼保護者みたいなもんだから、よろしくな」

保護者ってなんだよ…薮のやつ、俺が言い返せない時にバカにしやがって…

笑い合いながら握手してるこの二人は、まるで青春ドラマのワンシーンみたい。
初対面なのにさっき俺への救助(？)息ぴったりだし、しかも二人揃って左利きってすごい偶然だな。

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