【恋うた】Disc 1 (ページ31)

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実ることがないと分かっていても、薮への思いは募るばかりで。

けど、本当のこと打ち明けたら、きっと今まで築き上げた“親友”という関係性が一気に崩れてしまうに違いない。

それが怖くて、何よりも怖くて、好きという気持ちをずっと押し殺そうとしていた。

我慢できるよ、その笑顔が見られれば。
大好きなその笑顔のためなら、なんだって隠し通すから。

だから…
そばにいさせて？

好きで、いさせて。

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あっつい…もう…ムリ……

給水器につく前に死ぬ自信がある……

二学期の始業日、放課後の部活時間。

中学時代からずっと帰宅部だった俺が、炎天下のもとたくさんの水筒が入ってる大きいバケツを持ってのそのそと校庭を横断している理由、それは前期期末試験の前、薮との会話だった。

『なぁ伊野尾、』

『なに？』

『うちのマネージャーやってくんない？』

『…はあ？』

いつもの帰り道、自転車押して車道側を歩いてる薮が突然切り出したことに驚いた。

『今日さ、マネージャーやっている先輩が辞めるって言ったんだよ、試験勉強のために塾通うことになったって。で、コーチに“誰か相応しい奴いない？”って聞かれて』

『いや無理に決まってんじゃん』

『何でだよ。どうせ毎日俺を待ってるし、別にいいんだろ？』

『よくない。絶対やだ。』

体力を作るために小2からやってるサッカーは、薮の一番の趣味。

うちの高校のサッカー部は強豪とは言えないけどそこそこの実力があって、入学早々薮は入部届を提出した。

広いグラウンドを楽しそうに走り回っている薮を図書館の窓から眺めるのは、俺の日課。

サッカーをやっている薮は、いつもより輝いてて、カッコイイ。

たまに週末の練習試合とか手伝っているけど、毎日練習に付き添うとかマジで無理。

…一番近いところで薮を見られるって特典が付いてても、無理なもんは無理。

『頼むよ～マネージャーいないと不便なんだよ…』

『人を道具みたいに言うな。てか何で俺なんだよ。他のやつに聞けよ。』

『やだ、俺は伊野尾がいい』

『…何でだよ』

『う～ん…なんか安心する、顔見ると』

ふと視線をあげると、薮はこっちを見て微笑んでいる。

胸の奥の方がまた、ズキン、ズキンと疼いた。

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