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「それで…?」
「二週間くらいその状況が続いて、いのちゃんとうとう倒れちゃって、入院となった…予想通りって言ったら変だけど、あんなに食べてないんなら当たり前だよ、栄養失調になるのが。幸い治療拒否はしなかったんで、入院は長引かずに済んだけど、今の冷え性も、あの痩せ方も、その時の後遺症なんじゃないかと僕は思ってる。
コーちゃん…あっ、猫の方のコーちゃんね。あの子はいのちゃんが退院した日、帰り道に通りかかったペットショップで見つけた。いのちゃん、一目惚れしたそうで店の前から離れないから、僕が押したの。飼えば?飼って、その子のためにもちゃんとした生活をするんだよ?って…そしたらその場で名前付けて、本当にその子を連れて帰った。コーちゃんのおかげで、荒れた生活リズムが徐々に落ち着いてきて、また元のいのちゃんに戻ったんだ。その一ヶ月後かな?いのちゃんが突然『秋学期から美容系の専門に入ることになった』って報告してきたのは。」
そこで知念の話が止まった。再び訪れた沈黙は重くて、心がずんと沈んだような感じがした。
言葉が出ない。
一気に頭に情報が入りすぎてパンクしそう。
「…本当に、聞いてないんだ、何があったのって」
「聞いてない。僕にとって大事なのはそこじゃないから。」
「…どういう意味?」
「僕は、いのちゃんが元気で笑っていれば、それでいいの。」
いつになく真剣な表情を見せる知念は、いつもの可愛さがどこへやら、すごく大人っぽく見える。
「僕、小中で飛び級二回もしたから、同級生との付き合いはずっとうまく行かなくて…」“まぁ、年齢差のせいなのか、IQの差のせいなのかは分かんないけど”って、嫌味を補足しながらも語ってくれる。「いのちゃんは、大学で初めてできた友達で、唯一僕のことを普通に接してくれてた人なの。それまで周りに “あいつ調子乗ってるな”とか、“飛び級したからっていい気になるなよ”とか、散々言われてきてさ、お願いがある時だけ親切を装って、それ以外の時は陰口ばっかり…もう、人間不信になりかけてた。」
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yoku(プロフ) - ずみさん» 温かいお言葉をありがとうございます!涙出るほど嬉しいです(;_;)メンバーそれぞれの個性に沿って、言いそうな台詞を考えるのが個人的に楽しいです(笑)いつも亀更新で本当に申し訳ありませんが、これからも楽しんでいただけますように頑張ります:) (2021年6月7日 22時) (レス) id: df50adfb63 (このIDを非表示/違反報告)
ずみ - どんな人物も個性溢れる長編ですし、ストーリーもとても面白いです。読めば読むほど夢中になって、もらい泣きでもする寸前でした。素敵な作品をありがとうございました! (2021年6月5日 23時) (レス) id: 88ff7ddfb4 (このIDを非表示/違反報告)
yoku(プロフ) - みーさん» ま、まさかフォローしてるライターさんからコメント頂けるとは…!とっても励みになります!ありがとうございます!みーさんの作品をいつも拝読させていただいてますのでみーさんも頑張ってください:) (2021年6月4日 23時) (レス) id: d95cf3f703 (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 切なくて毎回泣きそうになりながら読んでます。素敵なお話をありがとうございます。更新楽しみにしてます。 (2021年6月3日 22時) (レス) id: 163ee9ceaf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:yoku | 作成日時:2020年1月5日 0時