短編集『恋日記。』【Ｎ】 (ページ8)

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「あまりにも遅いから、

どこかで倒れてるのかなって心配になって…。」

「トイレまでの道のりを探そうと？」

「うん。」

そう答えると、
「想像力ハンパねぇな。」と彼はいつものような笑い声を上げて笑った。

大袈裟に勘違いをしてしまったことが恥ずかしくて、

ｶｧ…っと頬に熱が走る。

「ひゃっ…！」

そんな私の火照った頬に彼は、ﾋﾟﾄ…っと冷たいジュースの缶を押し付けた。

突然触れた冷たさにびっくりして声を上げると、

彼はやっぱり意地悪に笑う。

その意地悪な笑い声までも愛しいと感じてしまう私は、

重症なのかもしれない。

「プレゼントフォーユー。」

「オレンジジュース？」

「そ、頑張ったご褒美的な？」

「ありがとう、私オレンジジュース大好き。」

「……。」

二宮くんから貰ったオレンジジュースを頬に付けて喜んでいると、

さっきまで普通に喋っていた彼が、急に静かになる。

「二宮くん？」

不思議に思って、視線を彼に向けて名前を呼ぶと。

「あれ…？」

視界に捕らえたのは、耳を紅く染める彼。

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