短編集『恋日記。』【Ｎ】 (ページ5)

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「じゃあ、問１からな。」

「ぁ、うん！」

私が何時間掛けても解けなかった問題を、

彼は難なく解説していく。

何だったの私の頑張ったあの時間と言いたくなるくらいだ。

足し算なんかの簡単な問題を解く様に、

彼はﾂﾗﾂﾗと言葉を並べて私に説明していく。

「‥ってことになるから、答えは？」

「えっと…、ぁ、分かった！」

「そうそう、正解。」

「解けちゃった…。」

思わず零した言葉を彼の耳は拾ったらしく、

「当たり前だろ。」っと笑って、私の頭をｺﾂﾝと小突いた。

「どこまでが課題なワケ？」

「な、何でこれが課題だって知ってるの…？」

「いやだって、ココに提出日書いてあるし。」

ココと彼の指で示された所には、確かに提出日が書いてあった。

一瞬エスパーなのかとか、思っちゃった自分が恥ずかしい。

「この１ページ、です。」

「じゃあ後３問じゃん。よし、さっさと終わらせて帰るぞ。」

「教えて、くれるの…？」

彼が何気なく発した言葉にびっくりして思わずそう聞き返すと、

ふっと意地悪な表情で笑っているのに色素の薄いその瞳は優しくて、

そんな彼の表情に、勝手にｷｭﾝとしてしまった。

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