短編集『恋日記。』【Ｎ】 (ページ40)

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【You’re mine.】-01- 《渡海先生》ページ40

*渡海side*

「深海先生。」

「垣谷先生、お疲れさまです。」

仮眠室の壁はわりと薄い。

そのため、医局での会話は丸聞こえだ。

「あの、深海先生。」

「はい？」

「今日、仕事終わりに食事でもどうですか？」

「え？」

心臓外科の紅一点。

加えて、あの容姿と性格。

俺と彼女が付き合っていることを知っているのは、猫ちゃんくらいだ。

だからこうやって、

彼女が誰かに誘われているのを聞くことは珍しいことじゃない。

「えっと…、すみません。まだ仕事が手付かずで。」

「そうですか…、それは仕方ないですね。」

「すみません、失礼しますね。」

断る時でさえ、きっと柔らかい笑顔で笑っているのだろう。

そうやって可愛い顔で笑うから、諦められない輩が増えていくのだ。

「はぁ……。」

それを本人が無自覚というところが、１番タチが悪い。

溜め息を零して寝返りを打った時、ｶﾞﾁｬ、っとドアが開いた音がした。

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