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嗚咽が漏れてしまう声を、

塞ぐように口を手で抑える。



その時。





「ったく、勝手に帰んじゃねぇよ!」


「ぇ…?」


息が切れてるけど、大好きなその声が鼓膜を撫でた。





恋焦がれて、どうしようもなく好きな彼の声。






「キャッ…?!」




振り返るよりも先にすごい力で腕を引かれて、

目の前に広がる黒の景色。




それが彼の着ている黒のTシャツだと分かったのは、

背中に回った彼の腕にギュッ…と力が籠った時。




彼に抱きしめられていると理解したのは。




「言い逃げなんてふざけたことしやがって。」


「っ…、」


耳元で聞こえる彼の掠れた低い声が聞こえたから。




「二宮く、離し、」


「A。」


「へ…、」


彼の口で。


彼の声で。


そっと紡がれた私の名前。




彼が呼ぶだけで何の変哲もない自分の名前が、

とても輝きを持っているように聞こえた。





.

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作者名:和音 | 作成日時:2019年1月27日 13時

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