Letter10 ページ10
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治療も不完全なまま、完全なる医師からの許可も得ず
私は病院を半ば強引に出た。
私を認めてくれたのは家族だけでした。
貴方の好きなように生きなさい。
そういった母親の顔はどこか寂しげで、私の死を覚悟したような目だった。
複雑な気持ちで登校すればころちゃんもるぅちゃんも
私を優しく受け入れてくれた。
ころちゃんと2度目のデートなのに風邪をひいてしまった時も2人は協力して私を支えてくれた。
受験勉強だって、ころちゃんと2人で頑張った。
生憎同じ大学には受からなかったけれど、それでも私は君と励ましあった日々だけでもう満足だった。
思いの外病気の症状は悪くならなかった。
だからもう私は治ったのだと、なんだかそういう気に滅入ってはしゃぎ回っていた高校生活。
私は病院を出た後からいつ死んでもいいようにころちゃんとるぅちゃん宛にこの手紙を苦手なりにひたすら書いていました。
受験勉強の合間に、夜寝る前に、暇さえあれば書いていた。
その日嬉しかったこと、あった出来事。
全て私の気持ちを曝け出そうと思った。
生きてた証を残したかった。
楽しかった高校生活。
病気に苛まれることもなかった高校生活。
ころちゃんと順調に進めてきた恋愛。
るぅちゃんに支えて貰ってここまで来れた達成感。
また新たな春、そう。大学生活、
────いや、
ころちゃんとの同棲生活が、始まったの。
本当は幸せで溢れているはずだった。
結婚を匂わす話だってしていた。
私がいつ消えてしまうか?
そう思ったら鳥肌が止まらなくて。
私は病の事を忘れていました。
忘れたフリをしていました。
でもその病は突然症状無自覚の私を襲う。
桜の咲く外に出ても、息は苦しくないの。
だから私は病気じゃない。
イライラ、イライラ。ストレスが溜まっている?
わかんないけどイライラで
頭がおかしくなりそうになったの。
その頃通院していたあの病院の医者が
こんな話をしていたことは知らない。
知る由もない。
「…この病は一旦症状が現れた後また鎮まる」
────今なら桜の下だって歩ける!
「鎮まった後に今度は本人が病による症状だと気づかない精神面での変化が起こる」
────ころちゃんあっち行って!
「その後桜に触れさえしなければ、症状は治まって命が助かる可能性が高まる」
スマホが鳴る。電話だ。
病院の名前が映し出される。
『私は大丈夫だから』
そう呟き、スマホの電源を切った。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時