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Letter44 ページ44



「あれ、るぅちゃん青髪の男の子は来ないの?」

Aのお葬式当日、彼女の母はそう聞いた。

「多分来るかと…」

あのころちゃんが来ないなんてことは無いよ。
そう信じていた。


「もう少ししたら来るかしら?あの子が凄い大切にしていた彼だからねぇ。喜ぶと思うのだけど… 」


────あぁ、そうか。


Aにとってころちゃんは特別な人。
それは紛れもない事実だ。


来なかったらきっとAは悲しむ。
ころちゃんも後悔する。


僕は外に出て彼に電話をかければ直ぐに応答があった。


「なんで来ないんですか?大切な元カノですよね?」



必死に彼を説得しようとした。
僕が次の言葉を放とうとした時。


────まもなく1番線に特急列車が参ります…


電話の向こうでアナウンスが聞える。


────危ないですので黄色い線までお下がりください。


「ころちゃん何で」


「悪いけど僕はこの街を出るよ。彼女の事を忘れたい。ありがとうね、るぅとくん」


は?自分勝手すぎない?


Aはころちゃんのこと大切にしていたのに!
大切にしすぎて病気を告白できなかったのに!

「ねぇ!」


その声は、彼に届かなかった。


僕はその時完全に彼に幻滅した。
もう二度と会わない、そう決めた。


空は彼女のお別れを嘆くように泣いていた。
どんよりとした雨だった。



彼女はただ眠っているように見える。
今にでも おはよう!なんて目を覚ましそうだ。



頬に触れれば人間らしい温もりはもうなく冷えきっていた。



火葬の直前に彼女の指から結婚指輪を引き抜いたのは君と僕だけの内緒。



今その指輪は僕の胸元でネックレスとして光っている。


全てが終えて外に出た時はもう空は晴れていた。


彼女が天国に登る道が示されているかのように光はまっすぐ桜を差していた。




花びらが僕の頬を撫でた。
ひとつ拾っては花を引き裂く。



気づいたら、そういう習慣?癖がついていた。




ほら。あれから数年経った今も僕は桜を拾っては破いている。


ころちゃんにあの時

気づけなかったのが悪い

そう言ったけど、僕も同じだったと、今なら分かる。



彼女が自 殺に追い込まれるほど悩んで苦しんでいたことに、旦那の僕は気づけなかったのだから。

1番阻止できる力を持っていたのは僕だったのに。


「ねぇころちゃん」

僕らは今、Aとサヨナラした桜の下にいる。


「Aは今どこにいるのかな」

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作品ジャンル:恋愛
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時

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