Letter42〜それから僕らは〜 ページ42
・
Aっ！A────────！！！
突然倒れた彼女の名を叫ぶるぅとくんを僕はただ呆然と見ているだけだった。
あれから数年たった今の僕でも、分からない。
あの日、何が起きたのか。
「救急車！えっとえっと」
慌ただしく電話をかける彼を、僕は
"冗談だろ？"
その程度にしか思えなかった。
Aにしてはよく出来た演技だなとか思って取り敢えず今の気持ちを止めようとした。
でもAの顔を除けば青白くて、呼吸も止まっているように見えた。
なんで？彼女は死んだというのか？
だって今日僕は、彼女に久々に会おうという趣旨で呼び出されたと言うのに？
"病気になっちゃって、ごめんね"
さっきのAの言葉が頭をよぎる。
「病気？そんなの聞いてないんだけど…」
「ころちゃん…」
るぅとくんは僕を哀れな目で見上げた。
哀れ？僕が可哀想？
彼女に嘘をつかれてた僕が？
るぅとくんは彼女の病を知っていた？
いつから。
┈┈┈┈┈┈
「残念ですが、八峰 Aさんは…」
病院は異様な空気に包まれていた。
重っ苦しい。
僕だけが、彼女を知らなかった。別れたあとの問題なら良いのだが、もし付き合ってる時から病気だったら？
────────旦那さんも辛いわよね…
看護師の声が聞こえる。
るぅとくんが旦那と呼ばれるのにも違和感しかない。
つい最近まで僕が彼氏だった気がしてならない。
するとAの母親らしき女性がるぅとくんの元へ駆け寄った。
「ごめんなさい僕、Aを守るって決めて結婚までさせてもらったのに、こんな形で……っ！」
彼が悔しそうに涙を零した。
僕はやはり、見ていることしか出来ない。
「いいのよ。私からるぅちゃんに結婚するよう頼んだようなものだし…それに、病気について知ってるのは貴方だけだったから」
ドクン。
僕の胸が、変に脈打った。
病気について知ってるのはるぅとくんだけ？
るぅとくんが病気について知ってたから結婚した？
僕は？僕が病気を知らなかったから別れたの？
ぐるぐる。目が回りそう。吐き気もする。
「るぅとくん、僕ちょっと外の空気吸ってくる」
そう言いドアに手をかけた時。
何でほっといてくれないんだよ。
彼はいつも僕の嫌なところに入ってくる。
「少しお話できませんか？」
控えめな表情がよくAに似ていて、また僕の涙を誘う。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます｡3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます｡1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います｡これを元に書籍化して欲しいくらいです｡颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです｡ (4月1日 3時) (
レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム･.｡*･.｡*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・！大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム･.｡*･.｡*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…！ (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん！素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：颯桜 | 作成日時：2020年3月1日 20時
