Letter41 ページ41
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あはは。
乾いた笑い声が心の中で聞こえた。
もっと話そうと思ってたことあったのに。
もっと美しいエンディングを用意していたのに。
私の命はそこまですらもたないんだね。
桜は私の死まで残酷なところまで追いやるんだね。
ごめんねころちゃん。
病気についてはるぅちゃんから後で詳しく聞いてね。
隠しててごめん。
ごめんねるぅちゃん。
2人で一緒だとあれだけ言ってくれたのに
最期の最期まで1人で突っ走って。
「Aっほら!ねぇっ!」
「A…?」
瞳を開ければまだ彼らの姿は見える。
はっきりと見える。
大丈夫、まだ生きてる。
話せ。最低限のことを。
今できる最大限を、彼らへ。
しっかりと自分の力で大地に足をつけ、視線をまた彼らに戻す。
小鳥の囀りは、私の死を待っているかのようだ。
『ころんくん、るぅとくん、 今までありがとうね。ほんとにありがとう。こんな私と会ってくれて、ありがとう。愛してた』
桜の木漏れ日は私の死を優しく受け入れるかのようだ。
『────病気になっちゃって、ごめんね。
次は必ず強い私で生きて帰ってくるよ』
視界の端に驚いた顔のころちゃんが見えた。
桜の花びらが、私たちの周りに寂しく散った。
そして私は春の空気を大きく吸う。
「────Aっ!!やめて!!!!!!!!!!!」
泣き叫ぶるぅちゃんの声が聞こえた。
悔しそうな目で私を見つめるころちゃんが見えた。
愛おしい2人。
仲良く2人で支えあって生きて欲しいな。
どうか、お互いを憎まないで。
どうか、自分を憎まないで。
どうか、自覚のない桜を憎まないで。
……お願いします。
憎むなら一生私を地獄においやるように恨んで。
2人はそれぞれ幸せになってね。
私のことなんかで引きずんなよ……!
幸せに……
私は、見えなくてもずっと、傍にいるよ。
私は、ずっと、貴方達を────────。
「A!」
「なんなんだよっ…!」
私は、案の定その場で倒れる。
だから、その後の世界なんて知らない。
ただ分かるのは、
たった一人の人間が死んでもこの世界は変わらず回り続けるということ。
私が死んだって、何も影響はないってこと。
今ここで遊ぶ子供たちは、私のことを知らない。
そのまま大人になっていく。
そのうち私の存在は忘れられる。
それでも世界は、美しく有り続ける。
それでも
私は確かに生きていた。
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時