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Letter32 ページ32





『美しいものほど残酷』

今まで私はよくそう言ってきた。


私をそういう考えに陥らせた犯人をみ見上げる。


『…もうすぐ、咲きますか?』


公園に立派に足をつける大木。


枝に手を伸ばして今にも咲きたくて仕方なさそうな大きな大きな蕾を撫でた。


『残酷なほど美しい桜。ちゃんと、私を殺してね』


桜の開花はもうすぐそこ。
私の死ももうすぐそこ。

私はその木の下に寝っ転がった。


視界には青い空と木しか映らない。

まるで、私しかここにいないみたい。



この世界で、たった数人しかかからない病。

滑り台で遊ぶあの子も、ブランコを漕ぐあの子も、ベンチでお話する大人達もかからない病。



なのに、平凡な私だけがかかった病。





桜が原因で死ぬなんて、可笑しすぎるよ。




『……でもそれ以上に、好きだなぁ』



暖かい気温が心地よくて。

私はそのまま寝てしまう。


このまま永遠に眠れてしまえばどれだけ良いか。

何度もそう思い続けても叶う事のない願い。


┈┈┈┈┈


「ご覧下さい!こちら、桜が咲き始めております!」



興奮したニュースキャスター。


至って冷静な私。
心配そうな顔で私を覗き込む彼。


「咲いちゃいましたね」

キッチンで何やら料理をしているるぅちゃんはダイニングテーブルでくつろぐ私にそう言った。



『ほんとだねぇ!春だよ春!』

私はもう明るさを取り繕う必要がなくなった。
死を覚悟している私は素のままでいられる。



「何があっても外に出ちゃダメですよ…?僕Aがいなくなったら悲しい。自慢の奥さんだから」


照れくさいことをまた平気で言うんだから。



「はい出来ました!朝ごはんです!」


私の目の前に出されたのは美味しそうなフレンチトースト。



『ありがとう!私もるぅちゃんは自慢の旦那さんだよ!』


「知ってますよ〜」


この頃のるぅちゃんは何も知らないんだろうな。

いや、彼の事だから薄々気づいてたかもしれないけど。


────私があと数日で死ぬなんて。



きっと、知るわけないよ。
私の中で勝手に決めたことだから。



『んん〜美味しい!また作って!毎日でも食べたい!』


るぅちゃん、これを私の最後の我儘だと思って。


「……A?」


彼が不安な表情を浮かべた。

「何か悩みでも抱えてる?1人で頑張っちゃダメですよ?僕も一緒に考えるから、ね?」


『……うん』



そうやって笑顔で取り憑くう嘘つきの私を許してね。

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作品ジャンル:恋愛
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mei - 何年経ってもこの小説が素敵すぎて読みに来てしまいます。3人それぞれの視点で読み返してみるとより深く考えさせられます。1つのお話として本当に素晴らしい作品だと思います。これを元に書籍化して欲しいくらいです。颯桜さんの書く素敵な物語に出会えて良かったです。 (4月1日 3時) (レス) @page49 id: ece57623d6 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - イチゴジャム・.。*・.。*さん» 素敵なコメントありがとうございます・・・!大変光栄です。 (2022年2月21日 20時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
イチゴジャム・.。*・.。*(プロフ) - 小説、占ツクが好きになったのはこのお話がきっかけです。読んだのは結構前ですが、素敵な作品をどうもありがとう…! (2022年2月20日 12時) (レス) @page49 id: 3017e9e097 (このIDを非表示/違反報告)
颯桜(プロフ) - 凛月さん» 凛月さん!素敵なコメントをありがとうございます。元から文を書くことが好きで趣味程度に始めた創作ですがこのように誰かの心の中に残るようなものを残せてとても誇らしく思います。これからもどうかよろしくお願いいたします。(私も凛月さんの作品好きです。) (2022年2月8日 0時) (レス) id: 86b77a05e2 (このIDを非表示/違反報告)
凛月(プロフ) - この作品を読んだのは随分と前のことなのに、今でも無性に読みたくなって、何度も戻って来てしまいます。占ツク外も含め、私が今まで読んできた小説全ての中で1番好きな作品です。本当に素敵な作品をありがとうございます。 (2022年2月7日 0時) (レス) @page49 id: 80b1d18970 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:颯桜 | 作成日時:2020年3月1日 20時

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