死して尚/Yuzuru [死ネタ] ページ13
桜が咲いている。
薄ピンクの花びらはハラハラと舞い散り、草原の上を染め上げた。
風が吹くと、私の服にも着いてくる。
今日で約1年。
結弦が、この世を旅立った日。
久しぶりに会えて、デートを楽しんでいたところに突っ込んできたトラック。
いくら彼でも、流石にそれは生き延びることの不可能な事故だった。
私は目の前が真っ暗になって、赤く染まっていく結弦の体を揺さぶっていたっけ。
周りから抑えられて、涙が溢れ出る視界で彼を見続けていた。
...不謹慎ながらに、死に際すらも美しかった彼。
私はよりいっそう涙が止まらなくて。
「結弦、ねぇ結弦」
病室で静かに眠る結弦を、私は傍で彼に呼びかけていた。
応答はなくて、代わりに医者から肩を叩かれる。
『こちら、羽生さんの元から』
そう言って差し出された紙袋。
私は覚束無い手でそれを受け取り、ゆっくりと中身を見た。
青い箱、また潤み始めた視界でそれを開けば、中にはシルバーの輝くリング。
私は咄嗟に結弦の指を見た。
彼の指にも、私の手元のリングと同じものが輝いている。
私は崩れ落ちた。
「結弦...酷いよ、置いてかないでよ。私、一生独身だよ...」
嗚咽と共に、何度も何度も泣いた。
数ヶ月の時を経て、やっと立ち直った時には桜も枯れて夏がきている。
「桜、綺麗だなぁ」
薬指には、キラリと輝くシルバーのリング。
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琥珀糖(プロフ) - ぬさん» リクエストありがとうございます。とても素敵なネタですね!頑張って書きます。これからもよろしくお願いします。 (2018年4月1日 22時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - astroyuzさん» コメントありがとうございます。主の性格には特に気を付けましたので、そう言って貰えると嬉しいです!これからもよろしくお願いします。 (2018年4月1日 22時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
ぬ - 昌磨君と幼なじみのスケーターさんでエキシビで昌磨君にプロポーズされる小説お願いします (2018年3月30日 8時) (携帯から) (レス) id: b271d24507 (このIDを非表示/違反報告)
astroyuz(プロフ) - 男主のお話がとても好きです。いい男なんだろうな、と楽しく拝読いたしました。ヒロイン嬢もおかわいらしく、癒やされました。この先の更新も楽しみにお待ち致しております。 (2018年3月28日 11時) (レス) id: afb95e6422 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀糖(プロフ) - なほなりさん» コメントありがとうございます、気付くのが遅れて申し訳ございません!そう褒めてもらえるととても嬉しいです!これからよろしくお願いします。 (2018年3月16日 17時) (レス) id: da50392b08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琥珀糖 | 作成日時:2018年2月25日 22時