アイドル《赤》

35 ページ35

.






仕事中だったらどうしよう、なんて考えたのはとっくに送信した後。











素直になることで、大毅くんを困らせるなんてこと何年も前から分かってるけど、

今日は大毅くんの優しさに甘えたくなった。





あの時言いたかった、我儘を言いたくなった。



















携帯を握りしめながら、やっぱり無理かな、と思って送信取消をしようとした時、トーク画面に新しい文が表示される。











大毅くんどこにおる











会いに来てくれる前提で話してくれてるところが、とてつもなく愛しくなって。

普通のカップルなら当たり前のことかもしれないけど、
私たちにとっては、ずっとしたくてもできなかった会話。

















したくても、お互いしようとしなかった会話。

















人目も気にせず会える理由ができたわけじゃないし、
大毅くんがたくさんのファンをもつアイドルってことに変わりはないんだけれど、









今は、今だけは、






重岡大毅、という男性に会いたくなった。


















大毅くんどこにおる



A家



A病院のすぐ西側にある、クリーム色のマンション



大毅くんすぐ行く



A部屋番号、106



大毅くん了解









.

36→←34

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す