７川上さんと…？ ページ7
「ねえ、どこいくの」
翌朝、伊沢さんの言う通り俺は、こぐまちゃんを連れて警察署へと来ていた。
生活安全課という課に伊沢さんが今朝、話を軽く通しておいてくれたこともあって、スムーズに中へと入ってこれた。
「ここ、なんかやだ」
「大丈夫」
「やだ……」
なんの保障もない、大丈夫という言葉の羅列を喋る。それでも、彼女は納得しない。不安そうに、俺の手を握って熊の頭に顔を埋める。
「...くま〜、怖いよぉ...」
小声でつぶやかれたそれは、空気に溶けた。熊の名前ってホントに「くま」やったんか。
こぐまちゃんのために伊沢さんが朝早くにコンビニで買ってきたフルーツの飴を差し出す。
「……どれがいい？」
「……ん、これ。ぼくのだいこうぶつ」
「ほら、食べな」
「ありがとう、かわかみさん」
一瞬。ほんの一瞬だけ、こぐまちゃんが自然な笑顔を見せてくれた気がした。
もう一度、振り返って彼女の顔を見た時にはもうその幻の笑顔は消えていた。
「そういえば、こぐまちゃん。腹話術、上手やなぁ」
「それ、ほんしん？」
「本心やって」
「それは、うれしい。ありがとう」
相変わらず、こぐまちゃんは俺と会話をしてくれない。先ほどの、"ありがとう、かわかみさん"なんて言葉は稀だ。貴重な会話だ。そして、はたから見れば、熊と会話する俺。これはどうにかしたい。切実に。
「お待たせしました」
そういって現れたのは、生活安全課の人。
目の前の部屋へと案内されたので、立ち上がり彼女の手を引く。
「……やだ、行きたくない」
「どうしたん？」
「ここ、こわいとこ。このひと、こわいひと。やだ、かえる」
「大丈夫やって。優しい人やで？それに、俺がおるし……」
「やだやだ、かえる」
唐突なイヤイヤ期。
警官は困り果てている。いや、俺も困ってるんやけど。
確かに優しそうな顔はしてないけど、何かあったんか？
思考をあらゆる方向へと巡らす。児童養護施設にいたということは、何かがあって保護された？つまり、警察とは面識がある？？……いや、そんな偶然―――ないことはないか。
でも、このまま連れて帰ってはそれこそ、犯罪―――になるかもしれない。
「その子は、一緒にいるだけでいいので、川上さんお話、聞かせていただけませんか」
困りはてた末、警官さんが出した言葉に、頷き同意を示す。
今にも泣きだしそうなこぐまちゃんをしっかりと抱えて、廊下よりも空気が温かい部屋の中へと入っていった。
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瑞西（シャラルー☆）(プロフ) - ゆのさん» わわ…っ、ありがとうございます！確かに、主人公ちゃんは可愛らしい（真顔）素敵なパワーをいただけたので、さらに良いものを提供できるよう頑張ります(*´▽｀*) (2019年12月25日 18時) (
レス) id: 705dc09b7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆの(プロフ) - 主人公が可愛くて、お話も素敵で、情報の管理もしっかりされていてすごいと思います！お話楽しみに待っているので、作者さんのペースで頑張ってください！応援しています(p｀･ω･´q) (2019年12月25日 9時) (レス) id: 6ede61fc28 (このIDを非表示/違反報告)
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