社畜の癒しは小人 ページ20
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「 有働くんさぁ、部下の管理くらいしっかりしてくれないと困るよー 」
「 誠に申し訳ございませーん。以後気を付けまーす 」
「 それにこの書類間違い多すぎ。今すぐ直してきて 」
「 お言葉ですがー、その書類を作成したのは私ではありませーん 」
「 なに、有働くん、助け合いも出来ない人なの？見損なったなぁ 」
「 誠に申し訳ございませーん。以後気を付けまーす 」
目の前で部長が長々となにかを喋っている。
まぁどうせ今回もつまらないお説教なのだろう。
こいつは私がここに入社してきたときからそうだ。
自分が常に誰かの上に立っていないと気が済まなくて、非がない社員に向かっても説教紛いのことをしてくる。
そして今自分は説教をしているという優越感に浸って、いい気分になるのだ。
これじゃあ犬や猫の方がまだ賢く理性的だ。
もういっそ部長の席犬か猫にしてくんね？まだこいつより有意義な時間過ごせそうだわ。
「 あんたの棒読み毎回最高だわ 」
「 だろ？最高の見世物すぎてチップ投げたくならん？ 」
「 ならんな 」
「 はーケチくさ 」
朝から部長の唾を飛ばされて気分は最悪だ。
いや、気分が最高潮の日なんて入社した日から一日たりとも無いけど。
例えるならマイナス5がマイナス10になった感じだな。
あーもうダメ、今日死の。今日こそ死のう。はい私の人生お疲れさまでしたー！
「 ……あ 」
……と、盛り上がっていたのだが。
なんの気なしにスマホを取り出したことで、私の死にたい欲はすうっと引いていってしまった。
スマホの壁紙に設定した、小人達七人の写真。
写真の中の伊沢くんと山本くんはカメラに向かって全力でピースしていて、その横に立っている須貝くんは、親指を立てた謎のポーズ。
こうちゃんは両手でグーを作っていて、福良くんは逆に手をパーにしている。川上くんは控え目なピースで、河村くんはむすっとした顔だけどギリギリ画角に入ってくれていた。
「 ……生きよ 」
彼らが我が家にやってきて一週間。
今まで空っぽだった私のアルバムは、今や桶で作った小さなお風呂で騒ぐ伊沢くんや、水上から送られてきた小さなフォークでご飯を食べる川上くん達の写真で埋まっていて、なんとも言いがたい感情がわき出てくる。
もし彼らが居なくなったら、その時は、小動物でも飼おっかな。
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作者名：朝田 | 作成日時：2020年12月29日 18時
