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八通目 ページ8

次の日から土日で、学校は休みだった。
 Aは落ち着かない休日を過ごした。兄は地元の友達と遊びに出掛けたが、Aは家にこもっていた。彼らの両親は仕事が忙しく、休日でも仕事関係で家に居ないことがしばしばある。この休日は両親どちらも朝晩の少しの時間しか家に居なかった。

 そして週が明けた月曜日、Aはいつもより少し早く学校に行った。

 ペンギンからの手紙には、返事の手紙を置く場所が示されていた。その指示通りに第一図書館に向かい、何度か確認してきっと合っているだろう場所を見つけた。本棚の奥の窓際、カーテンをちらりと開けて除けば、そこには丁度封筒が入る大きさくらいのクッキー缶が置かれていた。

 誰も居ない図書室に朝練に励む生徒達の声がぱらぱらと流れ込んでいた。その響きは近くで聞けば騒がしく熱気溢れるものであるが、この室内では静かで穏やかな音だった。

 Aがそっと蓋を開けると中には小さなメモが入っていて、その文字が、ここが正解の場所であることを告げていた。

――――――――
 見つけてくれて、ありがとう。
 あなたの手紙から二日後に、僕はまた返事をここに入れます。
 ペンギン
――――――――

 鞄の中に入れていた大切な返事を、そのメモと交換にそっと中に入れて蓋をする。

「この人の文字、やっぱり好きだなぁ」

 そう呟いて図書室を後にした。


 教室に入り自身の席についたAは、胸にあの時の残像が蘇って苦しくなった。ついさっきまで突然始まった文通に心が軽くなっていたのに。机に突っ伏して考えないようにするけれど、視界をくらくするとより残像が濃くなって泣きそうになった。だから振り払うように引き出しから読みかけの本を取り出して、その世界に入り込んだ。

 暫くすると、校舎内に人が増えてきた。

「おはよ」

 朝一番に挨拶をしてくれるのは、毎日決まって和菜だった。彼女はAの一番の友達で、気がつけば幼稚園から一緒だ。

「あ、おはよう」と本から視線を友人に移して微笑むAだが、付き合いの長い友人の目は誤魔化せないようだ。

「考え事?」

「本読んでたから」

 気にかけてくれる和菜のことは嬉しいけれど、その時は話せなかった。

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megumi(プロフ) - パトさん» 素敵なコメントありがとうございます!幸せな時間を差し上げることが出来たなんて、とても嬉しいです。これかの執筆活動の励みになりました。 (2021年3月7日 19時) (レス) id: 1a15500b7d (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - 素敵な作品を作って下さりありがとうございます。文章が綺麗でほのぼのとした雰囲気も好きすぎて、一気読みしてしまいました。幸せな時間をありがとうございます。 (2021年3月7日 17時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2020年2月1日 23時

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