七通目 ページ7
「手紙、もらったの。好きって言われた。どうしよう」
兄に顔を見られないようにそのままの体勢でAは最低限の言葉だけを告げた。
「はぁ！？」
彼女の予想通り、芳孝はかなり大きな声で叫んだ。慌てて振り向こうとする彼だが、Aにしっかり脇腹辺りの服を掴まれていて、それは出来なかった。
数秒後、背中から伝わる妹の様子に観念した芳孝は、はぁー、と大きなため息を吐き、声量を落として短く聞いた。
「どんなヤツだよ」
「知らない。顔も名前も分かんないもん」
「名前も分からないっておかしいだろ？」
「今は言えないみたい。言いたくないのかも。分かんないけど。でもきっとこの人は悪い人じゃないって分かる」
兄の批判に対して、Aは無意識のうちに手紙の送り主を庇っていた。その声は小さくても、口調に力がこもっていた。何故こんな言葉を並べたのか、彼女自身も分かっていなかった。
「何て書いてあったんだ」
もう兄の声はいつもの柔らかさに戻っていた。そこには諦めも含まれていた。Aの言っていることを信じようと思ったのかもしれない。
「言わない。ただ、最後は手紙の返事を書いて欲しいって終わってた」
Aは自分の為に誰かが一生懸命書いた文字を、例え身内であっても簡単に晒したくなかった。ただ、返事を書くべきかどうか迷っていたので、兄の考えを聞きたかった。
「じゃあ、返事かいてやれよ。Aは貰って嬉しかったんだろ？」
兄の言葉に悩んでいた頭が一気にクリアになった。Aは兄の背中から離れ、隣から顔を覗き込み「そっか、ありがと！」と笑顔を見せた。
そしてすぐに階段を駆け上がって部屋に入り、勉強机の椅子に座った。引き出しからお気に入りの便箋と封筒を選んでペンを滑らせた。
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ペンギンさんへ
お手紙、ありがとうございます。
突然のことで驚きましたが、あなたの言葉がとても嬉しかったです。
わたしもペンギンさんを何も知らないけれど、あなたもきっとわたしのことを何も知らないから、友達から始めてこれから少しずつ知り合いたいなと思います。
Aより
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megumi(プロフ) - パトさん» 素敵なコメントありがとうございます！幸せな時間を差し上げることが出来たなんて、とても嬉しいです。これかの執筆活動の励みになりました。 (2021年3月7日 19時) (
レス) id: 1a15500b7d (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - 素敵な作品を作って下さりありがとうございます。文章が綺麗でほのぼのとした雰囲気も好きすぎて、一気読みしてしまいました。幸せな時間をありがとうございます。 (2021年3月7日 17時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2020年2月1日 23時
