二十五通目 ページ25
健吾はいつか和菜に聞いたことを思い返していた。
この和菜と言う少し男前で気さくな女子とは去年同じクラスで知り合った。大きなきっかけがあった訳でもないし、どの時点で仲良くなったのかなんて忘れたが、兎に角彼女とは何気ない接点が重なり、去年一年の間で気の置けない友達にまでなった。
そんな中で、和菜に特別大切な友達が居るという話を聞いたのは割と早い時期だった。けれどその友達がどんな子なのかを知ったのは、暫くしてからであったし、その子を認識してからも謎は多かった。
そしてその後健吾の中で色々とあり、Aは彼の想い人になったのだ。
好きなれば知りたいと思うし、関わりたいと思う。それから見つければ目で追うようになる。そのうちにAが総士のことを思っていると健吾は分かってしまった。
どうしようかと悩んだ彼は、和菜に相談した。思いの丈を打ち明けると、彼女は真剣な目をした後で申し訳なさそうに眉を下げ薄い微笑みを唇に添えた。
「中一の時、市立図書館でたまたま会って福森くんを知って、好きになって、そのままただずっと好きでいるの」
「一目惚れ?」
まああの総士なら、一目惚しても頷ける。今までに沢山そんな女子が居ることは想像に難くなかった。そんなことを考えて健吾がため息を吐くと、和菜は優しい眼差しで答えた。
「一目惚れはあの子にできない」
その言葉に息を呑んだのを、健吾は今も覚えている。
「Aは人が苦手で繊細だからこそ、相手の気持ちとか雰囲気の温かさとか、そういう中身を感じ取るのが得意なの。自覚はしてないと思うけど。だから、外見がタイプだからって理由で好きなることはない」
それから和菜はAが総士を好きになった過程を語った。
「図書館で彼が好きで取ろうとした本と、自分の直感で読もうとした本が一緒だった。読むととても綺麗な世界観で、それを好きだと言った彼自身のことが気になった。雰囲気も印象に残ってた。奇跡的に同じ学校の同じ学年だった彼は、全く違う世界に居る人だったけど、外側から色んな彼を見ている内に恋を自覚した。これが全部」
大切に想われる総士を羨ましく思った。
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megumi(プロフ) - パトさん» 素敵なコメントありがとうございます!幸せな時間を差し上げることが出来たなんて、とても嬉しいです。これかの執筆活動の励みになりました。 (2021年3月7日 19時) (レス) id: 1a15500b7d (このIDを非表示/違反報告)
パト(プロフ) - 素敵な作品を作って下さりありがとうございます。文章が綺麗でほのぼのとした雰囲気も好きすぎて、一気読みしてしまいました。幸せな時間をありがとうございます。 (2021年3月7日 17時) (レス) id: 8ed95612e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2020年2月1日 23時