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痛みを分かってくれる友達 ページ41

数秒間目を合わせた後、由貴はまた前に視線を流す。私は半分だけ顔を前に回して、少しの横目で彼女を眺めた。
 彼女は遠く哀しい目をそのままに、ゆっくりとまばたきをした後、残っていたお酒を一口飲んだ。

 そして片肘をついてその手の上に顎を乗せ、くるりと私の方を向いた。

「ねぇ、Aはさ、今日は大丈夫?」

 由貴の声で、もう一度彼女と顔を向き合わせて言葉を失くす。

 彼女のその表情は無理矢理の笑顔で、今にも壊れそうな気持ちを支えていた。

 その問いにすぐに答えられられなかったのは、由貴の言葉の意味が汲み取れなかったのではなくて、哀しみを隠すためのはずなのに逆に辛さを際立たせているその笑顔から目が離せなかったからだ。
 
「今日は元気?」

 もう一度聞かれてハッとし、ポツリと答えた。

「今日は辛い日かな」

 朝倉さんと最後に会って本当のさよならをしてから、由貴はほぼ毎日この問いかけをする。毎日気にかけてもらうのは悪い気がするけれど、私は彼女の声に着実に救われていた。

 "時間が傷を癒す"という世の中の素敵な掟に、逆らわずにはいられない痛みが人にはある。毎日痛みに耐えて、時々我慢できる時もあるけれど、ほとんど毎日巻き戻し。
 そんな抱えたものを分かってくれる人が、由貴だった。

「そっか……」

 私の答えに、私以上に辛そうな顔をして彼女は答えた。



 思い返せば朝倉さんは、分かってくれていなかった。私が一緒に居たくて、そんな彼に傷つかないふりをして過ごしていた。満たされたふりをして傷にその場しのぎの癒しを与えて、満たされない心を持て余していた。
 分かって欲しいとか、寂しいとか、そんな泣き言さえ一つも言えなくて、いつしか彼の前で泣かないように頑張っていた。

「お母さんのこと、まだ思い出すと辛い?」そう聞かれる度に心は凍えていた。「朝倉さんと居られるだけで癒されます」――いつからか、彼を満たす返事を覚えて、会話を切り上げていたっけ。



「じゃあ、今日はもうこの一軒で終わりにして、うちに行こう? 話したいことがあるの」

 何かを決心したように瞼で一度頷いて、由貴は言った。

寒さによく似たもの→←友人の愚痴



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設定タグ:オリジナル , 名前変換 , 不倫   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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megumi(プロフ) - 楓さん» コメントありがとうございます。深く感じ取って頂けて、作者として本当に嬉しいです。たかが恋、されど恋……愛や恋は人生を大きく変えたり、辛かったり哀しかったり、幸せを与えたり、影響力が強いですよね。こちらこそ、読んで頂きありがとうございましたm(__)m! (2020年2月12日 8時) (レス) id: 0880e9be07 (このIDを非表示/違反報告)
- 叶わぬ恋って本当に辛いの分かりますが、不倫はないので本当に夢主ちゃんは辛かったのだな、と思いました。何が正解で何が不正解なのかなんて誰にも分かりませんが、自分の決意した己が答えを見いだすことが正解なのだと私は思いました。ありがとうございました。 (2020年2月12日 3時) (レス) id: da7e11619f (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます!この頃仕事でバタバタしていたので、更新頻度が落ちていましたm(__)mこれからも頑張りますのでよろしくお願いします! (2019年11月26日 7時) (レス) id: 38c83e71ca (このIDを非表示/違反報告)
- 連続更新嬉しいです!!頑張ってください! (2019年11月25日 23時) (レス) id: 42f53dea12 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - あさん» ありがとうございます、励みになります!好きになって下さって嬉しいです( *´艸`)更新頑張ります! (2019年10月19日 20時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月26日 23時

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