桃色 22輪目 ページ23
-Aside-
いよいよこの日が来た。刻一刻と迫る時間。あと八分で未来が決まる。
今から十日程前、二次試験へブン太と出発した。駅にはあずさと幸村君とそれにジャッカル君まで来てくれた。
「Aなら絶対大丈夫! 」
「ありがとう、頑張ってくる」
「丸ブンは心配だけど」
「はぁ!? そこは応援するところだろぃ?」
「丸井、常勝立海大として不合格はあり得ないからね」
「プレッシャー……」
しゅんと俯くブン太を見て、幸村君はクスリと笑った。
「大丈夫、二人を信じてる」
「ありがとう。信頼を裏切らないように、頑張るね」
「終わったら、ラーメン奢ってやるよ」
「頼むぜジャッカル」
試験当日の朝はメールが届いた。
『勝率99.9%』
あえて100%を使わないことに柳君らしさが滲んでいて、笑みがこぼれた。
そんな私の様子を伺ったブン太だったが、彼にもメールが届いていた。
『プリッ』
「意味分かんねぇ」
その意味は分からなかったけれど、なんだか可笑しくて二人で笑い、そのお陰で爆発寸前だった緊張がほぐれたので、心の中で仁王君に感謝した。
そして私達は無事に試験を終えた。
もうすぐ大学のホームページで合格発表がされる。リビングに家族で集まり、その瞬間を固唾を飲んで待つ。ブン太達とはこの後高校に集まる約束をしている。
カチッと時計の針が丁度午前十時を指し、その時が来た。
合格発表のページの医学部医学科の文字を、逃げ出したくなる気持ちで目をつむりながらクリックした。
恐る恐る受験番号を追う。もう手先がしびれる程の緊張で、めまいがしそうだ。
「……あった、本当にあった!」
胸に張り詰めていた糸が途端に切れて、溢れ出す涙。家族で抱き合って喜びを噛み締める、この感動を表現する言葉が見当たらない。
その数分後インターホンが鳴り、ドアを出ると愛しい彼が立っていて、思わず飛びついた。
「私、合格したよ!」
けれど、背中に感じる彼の手が少し冷えていて、不安が走る。
「ブン太?」
「俺、ダメだった」
さっきまでの喜びが消えて、悔しさに染まる。意味の違う涙が溜まった。
「なーんて、受かったぜ! 天才的? って、泣くなよ」
その冗談にムッとして、でも嬉しさのが勝って、笑顔で泣いた。
高校に着くと、いつものメンバーが祝福してくれた。
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます!登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います! (2021年3月5日 18時) (レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます!楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました!沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です! (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:megumi | 作成日時:2019年7月11日 22時