桃色 21輪目 丸井side ページ22
-丸井side-
「 いてっ！ もう、押さないで下さい、仁王先輩って……」
腕の中で包まれるAに幸せと緊張を感じていると、向かいの植え込みの陰から騒がしい人影が出てきた。俺と目があった途端、げっ、と聞こえるくらいの気まずい表情をする赤也。
その声に反応したAは胸から離れ、奴の存在を把握すると同時に顔を真っ赤にして俯いた。
「何でいっつもお前は！」
以前も俺達の姿が目撃され、それが回りまわってAが傷付いてしまったことが思い出されて、今回のことも合わせて怒りが込み上げた。
感情に任せて怒鳴ると、「うえー！ そんなの俺が悪いんじゃないっスよぉ」と青い顔をしながら視線を後ろに移した。
「ピヨッ」
「まったく仁王君は……」
「おい、だから俺は止めたんだぞ」
「赤也、ジャッカル、もう見つかっちゃったんだし仕方ないよ。A、ごめんね」
「全て予想通りだがな」
ぞろぞろと出てくるいつもの仲間達。普段こいつらが通らない道のはずなのに、どうして揃っているんだと顔をしかめる。
「尾行などけしからん！ だいたい何の為に図書館に行ったのだ！」
最後にひと際大きな声で怒鳴る真田の言葉で、真相が明らかになった。真田だってちゃっかり付いて来てんじゃねぇか、と心の中で突っ込み、深いため息をつきながら項垂れる。
すると頭上から説教が飛んできた。
「丸井もだ。この歳で異性と抱き合うなど！ 加えて路上など論外だ」
少し覇気が足りないと不思議に思って真田の顔を覗くと、その頬は赤く染まっていて、それが面白くて吹き出しそうだった。
騒がしく言い合っていると、Aが恐る恐る、か細い声で袋を差し出した。
「あの……これ、皆さんも一緒に食べませんか？」
それはさっき買った肉まんで、二人で食べようと思っていたやつだ。やけに腹が減って多めに買ったので、半分こすれば皆足りる。
早く二人に戻りたかったこんな時は、Aの優しさが憎らしかった。
遠慮の欠片もなく楽しそうにする仲間達を、恨めしく睨む。
「先輩、優しいっス！」
はしゃいだ赤也がAに触れそうだったので止めようとすると、柳が静かに話しかけてきた。
「お前はあいつを裏切るなよ」
「当たりめぇだろ、ずっと離さねぇよ」
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megumi(プロフ) - かるぴんさん» コメントありがとうございます！登場人物達に寄り添ってお読み頂き、とても嬉しいです。沢山のお褒めの言葉と、作品を好いて下さり、ありがとうございます。これからも、執筆活動に勤しんでいきたいと思います！ (2021年3月5日 18時) (
レス) id: ba823ca860 (このIDを非表示/違反報告)
かるぴん(プロフ) - 他の作品と比べるのは野暮かもしれませんが、今まで読んだどの小説よりも心理描写が丁寧で登場人物に共感しまくりでした。きゅんきゅんしたり苦しくなったり感情の変化が忙しかったです。2つのエンドを見れたのも嬉しかったです。何回も読み直させていただきます。 (2021年3月5日 15時) (レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - YUEMINさん» コメントありがとうございます！楽しんで頂けて、作者はとても嬉しいです(*^▽^*)応援に応えられるよう、頑張りたいと思います (2019年10月21日 18時) (レス) id: d64ff74b54 (このIDを非表示/違反報告)
YUEMIN(プロフ) - 完結おめでとうございます！楽しく読ませていただきました!!次回作も頑張ってください。応援してます。 (2019年10月21日 18時) (レス) id: 1af2bac581 (このIDを非表示/違反報告)
megumi(プロフ) - ユッキーさん» いつも応援して下さり、ありがとうごさいました！沢山感じて頂き、嬉しく思います(^^)恋という感情は不思議ですよね。この作品を素敵と言って頂き、感謝です！ (2019年10月14日 7時) (レス) id: b41fbb72a1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：megumi | 作成日時：2019年7月11日 22時
